桜なでしこ物語【第2章】| 第33回 長野パルセイロLとの入替戦

長野パルセイロLとの入替戦

 2019なでしこリーグ2部は8月31日に再開された。後半戦も楽な戦いではなく、アウェイ連戦(第11節、愛媛FCレディース、第12節ちふれASエルフェン埼玉)に連敗、第16節(10月14日)のニッパツ横浜FCシーガルズ戦では宝田沙織が負傷しその後離脱するアクシデントも発生。が、終盤の3節で計12得点をあげて3連勝すると、優勝した愛媛FCレディースと勝点1差の2位に滑り込み、入替戦出場権を得た。

入替戦の相手は、1部9位のAC長野パルセイロ・レディース。11月10日、ホームで行われた第1節
は立ち上がりから相手の攻勢を受けたが、何とか跳ね返し続けて0-0で終了した。

 11月16日、アウェイ・長野Uスタジアムでの第2節。「ホームでアウェイゴールを取られていないので、1-1、2-2ならかなり有利な状況になる」。岡本三代監督は選手たちに話した。緊張は見られずキックオフを迎えたが、直後にDF筒井梨香が負傷するアクシデントが発生。急きょ、松本奈己が交代でピッチへ。緊張したと話した松本だが、周囲の声に支えられ、相手FWと果敢にマッチアップした。


相手FWと空中で競り合う松本奈己。冷静なプレーに終始した


 第1節よりさらにパワーを増した相手の攻撃に必死のディフェンスを見せていたが、前半アディショナルタイムに失点。リードを許してハーフタイムを迎えた。

 後半の頭から、岡本監督はFW百濃実結香を送り込んだ。「得点を奪うのだ」というはっきりしたメッセージを込めて。果たして、その狙いは的中した。百濃がサイドから切れ込み、マイナスのパスを送ったところに、林 穂之香が詰めた。執念のゴールが決まり、貴重なアウェイゴールを奪った。そのあと何度もピンチを迎えたが、GK石田心菜のスーパーセーブなどでゴールを死守。1-1のまま試合を締めてセレッソが入替戦を制した。


決めたのは林 穂之香。値千金の“決勝点”だった


「ベンチ外の選手、けがをして出られない選手もたくさんいて、そういう選手たちがミーティングのときや食事のときなどに思いを話してくれた。自分は試合に出られるので最後まで戦いたいという思いがあった」。林はこの一戦に込めた思いをこう表現した。

 リーグカップ決勝に続く殊勲のゴールについて岡本監督は、
「普段の取り組みからまじめに真摯にやっている選手なので、必ず林のところに(チャンスとなって)返ってくるというか、(決勝ゴールを含む2得点だった)リーグカップ決勝も同じで、そういうエネルギーを本人が持っているのだと感じた」
 と、称えた。



試合終了。苦しみながら目標達成!


 劇的なゴールで昇格を勝ち取った形だが、多くの若い選手たちの成長と献身も記しておきたい。左サイドバックとして、試行錯誤しながらも常時出場を続けた小山史乃観。抜群の得点力をなでしこ2部でも発揮した浜野まいか。入替戦の大舞台で2試合とも先発出場して前線で奮闘した北原朱夏。入替戦第2節で急きょ途中出場し屈強な相手と渡り合った松本奈己。昇格につながる林のアウェイゴールを引き出した百濃実結香。ゴールを死守した大阪学芸高等学校女子サッカー部所属のGK石田の存在も忘れてはならない。2019年の集大成がこの入替戦と1部昇格であり、育成型クラブとしての矜持を示した形になった。


 

入替戦2戦とも先発。ガッツあふれるプレーを見せた北原朱夏

 

2020年、再びなでしこ1部で戦うことが決まったセレッソ大阪堺レディース。ここから、また前進!


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セレッソ大阪堺レディースが再びなでしこリーグ1部で戦うことになった2020年春。世界は新型コロナウイルス感染拡大というかつてない禍の中にあり、サッカー界も甚大な影響を受けている。7月18日に開幕するなでしこリーグでは、苦境を乗り越えてピッチに立つ選手たちのプレーを目に焼き付けたい。そして日常にサッカーがある幸せをかみしめたいと思っている。

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 桜なでしこ物語第2章は、ひとまずここまでとなります。「with コロナ」の世界で始まる新しい物語も近い将来お読みいただけるよう、準備してまいります。ご愛読ありがとうございました。これからもセレッソ大阪堺レディースに温かいご支援をお願い申し上げます。

文・横井素子