天皇杯 JFA 第105回 全日本サッカー選手権大会3回戦

天皇杯 JFA 第105回全日本サッカー選手権大会

2025.7.16

セレッソ大阪

ルーカス フェルナンデス (60')

ラファエル ハットン (87')

2

OTHER

FULL TIME

0

0-0

2-0

徳島ヴォルティス

鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアム

3,475

ギャラリー

MATCH REVIEW

徳島ヴォルティスとの天皇杯3回戦は、前半は苦戦も後半にギアを上げて2得点。守備でもクリーンシートを達成、ラウンド16進出を決める


明治安田J1リーグ第23節・ガンバ大阪戦から中10日。鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアムで行われた徳島ヴォルティスとの天皇杯3回戦に臨んだセレッソ大阪。先発はガンバ戦から7人変更。本間至恩とディオン クールズが加入後、公式戦初先発を果たし、奥田勇斗が左サイドバックに、ヴィトール ブエノが1トップに入る4-2-3-1でスタートした。

強風が吹きつける中、前半は風上に立ったセレッソは、開始7分にビッグチャンス。前から柴山昌也、喜田陽、本間と連動したプレスで相手センターバックのミスを誘うと、ゴール前でブエノに絶好機が訪れたが、シュートは打ち切れずにパスを選択。惜しくも得点につなげることはできなかった。その後もボランチの喜田を中心にボールを握って敵陣へ進入していくと、10分にもチャンス。柴山のCKをニアでクールズが巧みに合わせたが、ゴールとはならなかった。入りこそ悪くなかったセレッソだが、その後は球際の攻防で選手が痛むシーンも増えるなどプレーも途切れがちになり、徳島の守備に対して攻撃でリズムを掴めないまま時間が経過。パスのテンポも上がらず、前半はシュート1本に終わった。「チームとしても個人としても思うようにゲームに入れなかった」と試合後に吉野恭平も振り返ったように、どちらかと言えば徳島のペースと言える前半だったが、39分に与えた徳島の好機ではGKキム ジンヒョンが好セーブ。守備では隙を見せず、0-0で折り返した。

攻撃の形を作れなかった前半を経て、後半に向けてチームはロッカールームで課題を整理。「ハーフタイムにみんなでコミュニケーションを取って、『もっとテンポを上げていこう』という話をしました」(キム ジンヒョン)、「ハーフタイムでは『距離感が良くない』という話も出ていました。距離感を縮めるように、後半は僕自身も前めにポジションを取ろうと心掛けました」(吉野)。攻撃のギアを上げて得点を奪うべくピッチに入ると、後半は入りから立て続けに好機を作る。47分、本間が深い位置まで入って中にクロス。柴山が合わせてゴールに迫ると、56分にはこの試合、最初の決定機。両サイドから分厚い攻撃を仕掛けると、最後はルーズボールに反応した本間が右足でダイレクトボレー。枠に向かったが、惜しくも相手DFのクリアに阻まれた。続く57分には2度目の決定機。喜田、吉野、柴山とつないで中央を割ると、最後は柴山のパスから左サイドを抜け出した本間のクロスに逆サイドから走り込んだルーカスが右足アウトで上手く合わせたが、GKの好セーブに防がれた。60分にも決定機。奥田のパスで左サイドの背後を取った本間がドリブルからシュート。ここはDFのブロックに遭うも、サポートした奥田のシュートが無人のゴールへ向かったが、カバーに入ったDFにクリアされた。ただし、この試合4度目となる次の決定機で先制に成功。相手FWのトラップが大きくなり、こぼれたところを拾った吉野がドリブルで運んで丁寧にラストパス。抜け出したルーカスがGKとの1対1を制して対角に叩き込み、見事にネットを揺らした。後半開始から圧巻の畳みかけを見せた攻撃が先制点に結びついた。

ここから両チーム、リーグ戦で主力を張っている選手たちが続々とピッチに入っていく。その中でセレッソは85分に背後を取られかけたが、西尾隆矢が戻ってカバー。相手のスピードにうまく対応、いい状態でシュートを打たせない素晴らしい守備を見せた。すると87分、試合を決定付ける2点目が決まる。田中駿汰のパスが相手GKとCBの中間地点に落ちると、ラファエル ハットンが猛然とプレス。GKのキックを足に当ててボールを奪い、そのまま無人のゴールへ流し込んだ。終盤は徳島のセットプレーもしっかり防いだセレッソがこのまま2-0で勝利。前半こそ苦戦したが、終わってみれば複数得点とクリーンシートを達成。J1の貫禄を見せ付けて、ラウンド16進出を果たした。

監督コメント

■アーサー パパス監督

「すごく良いパフォーマンスが見られたと思います。試合が進むにつれて、良いプレーが出ました。徳島さんもリーグ戦では好調なチームで、失点も少ないチームです。徳島さんの守備が良いことは分かっていましたが、空いてくるスペースも分かっていたので、後半に入る前にそれをしっかり伝えて、選手たちがよくやってくれました。選手たちには『おめでとう』と伝えたいです」

Q:後半の内容は見事でしたが、前半はなかなかペースを掴めませんでした。直近のリーグ戦でもそうですが、入りでギアが上がらないのは試合間隔が空き過ぎている問題もあるでしょうか?どう見られていますか?
「試合に入るメンタリティーは良かったと思います。(ヴィトール)ブエノのプレスでボールを奪い、攻撃に展開できたシーンもありました。前半、苦労したのは、試合の流れを作ることです。ボールが外に出たり、プレーが止まる時間が長く、試合を作ることに苦労しました。もちろん、相手をリスペクトした上での話ですが、毎回プレーが止まると流れをもっていくことは難しいです。レフェリーの方が、ボールが外に出た時に早く再開させるよう促したり、(遅延行為で)イエローカードが出始めてから、ボールがクイックに動き始め、流れが自分たちに来たと思います。ただ、チームはフラストレーションを溜めることなく、しっかりと流れが来た時に流れに乗っていけたので、その点では、よくやったと思います」

Q:先日の試合で髙橋仁胡選手が負傷し、舩木翔選手の完全移籍も発表されました。今日はベンチに登里享平選手も不在でした。その中で奥田勇斗選手を左サイドバックで起用されましたが、彼の今日の評価は?
「少ない人数で戦うことは、選手にとっても難しさはあると思いますが、今年はこういう状況が初めてではありません。今日は(奥田)勇斗が左サイドバックでプレーしましたが、良いパフォーマンスだったと思います。ディオン(クールズ)も右(サイドバック)で良いフォーマンスを見せたと思います」

Q:守備では無失点で終えました。体を張って守るシーンも見られたが、今日の守備の評価は?
「序盤は失点も多かったですが、シーズンが進むにつれて、守備での改善も見られています。守備は攻撃の始まりです。つながっています。良い守備から攻撃に移って点を取るシーンも多々、見られるようになってきました。最後のハットンの得点が印象的ですが、追っていくからこそ、こぼれてきます。守備の意識も高まっている手応えはあります」

選手コメント

■ルーカス フェルナンデス選手

Q:貴重な先制点になりました。ゴールシーンを振り返ると?
「しっかりとした守備、良いプレッシャーから生まれたゴールだったと思います。吉野選手のパスも素晴らしかったので、しっかり決めることができて良かったです。(シュートは)対角を狙いました。GKにはじかれても、詰めることができると思ったので、とにかく強いシュートを打とうと心掛けました。入って良かったです」

Q:奥田選手との連係も成熟してきた中で、今日はディオン クールズ選手と縦関係を組みました。その点に関しては、いかがでしたか?
「問題なくプレーできました。彼は日本に来て間もないので、もっと日本のサッカーに順応していけば、さらに良いパフォーマンスを出せると思います。ただ、今日の試合を見ても、とてもクオリティーの高い選手なので、これからもっと関係性を良くしていけると思います」

Q:アウェイの中、今日も多くのサポーターがスタジアムに来てくれたが?
「心強かったですね。前回はホームでダービーに負けてしまい、みんながショックを受けた結果でした。自分たちもそうですし、サポーターもそうだったと思います。ただ、今日はしっかりそれを乗り越えて、ポジティブな結果をサポーターに届けることができて、良かったと思います」

■吉野 恭平選手

Q:前半はリズムを掴みづらい展開だったように見えたが、後半は入りを含めて圧倒できたと思います。試合を振り返ると?
「前半はチームとしても個人としても思うようにゲームに入れませんでした。ただ、失点ゼロで抑えていけば、後半は相手も落ちてくると思ったし、破壊力はセレッソの方があると思っていたので。前半はしっかり耐えて、後半に2点を取れたことは、セレッソの力を示せたと思います」

Q:前半の流れであれば、ある程度、前半は0-0でもオッケーという心境でしたか?
「もちろん、監督は『最初から行け』と言っていましたが、あのような流れになってしまった以上、個人的には、最悪0-0でもいいと思ってプレーしていました」

Q:先制点は自身のスルーパスから生まれたが、あの場面については?
「前半から『ターンしろ』と言われていましたし、後半はチャレンジしようと思っていました。あの場面は良いところにボールが転がってきたので、ルーカスに出せば決めてくれると思いました。ゴールにつながるパスを出せて良かったです」

Q:加入後初アシストです。数字が付いたことに関しては?
「数字というより、ルヴァンカップ(プレーオフラウンド第2戦・横浜FC戦)にスタメンで出た時は落としてしまったので、今日は結果が欲しかった。勝てて良かったです」

Q:後半はセカンドボールも拾えていたが、前半から改善できた?
「ハーフタイムでは、ロッカーでも『距離感が 良くない』という話は出ていました。距離感を縮めるように、後半は僕自身も前めにポジションを取ろうかなと心掛けました。結果的に先制点の場面もうまくセカンドボールを拾えたので良かったです」

■本間 至恩選手

Q:加入後、公式戦初先発になりました。気持ちが見られた試合になったが?
「自分自身としても約1年ぶりの先発でした。得点やアシストという結果を残してやろう、という気持ちで入りましたが、何よりチームが勝つことが一番だったので、勝てて良かったです。前半は相手も固く、崩すのは難しかったですが、後半になってスペースが空き始めて、
チャンスも増えました。自分のところにも良い形でボールが入ったり、シュートを打つシーンもあったので、どこかで一つ仕留めたかったです。そこは自分の中の課題が明確に見えました」

Q:最初から出ると、また違いますか?
「そうですね。途中から入る場合は、最初から全力で100%を出して、守備して、走ってと、やることは明確です。ただ、やっぱりスタメンで出る場合は試合の流れを作ることもそうですし、久しぶりの感覚で難しいところはありました。でも思ったより悪くはなかったと思います。結果が付いてくれば一番良かったです」

Q:後半、立ち上がりの決定機は、ほぼ本間選手が絡んでいました。得点にあと一歩まで迫れたことは、今後に生きてくるのでは?
「そうですね。ペナルティーエリアに入ってシュートを打つシーンやクロスを上げるシーンが増えていけば、必然的にゴールも生まれると思うので、その回数を増やしていきたいです」

■ディオン クールズ選手

Q:加入後、公式戦初先発でフル出場されました。試合を振り返ると?
「まずはスタメンに選ばれたことを嬉しく思います。試合に関しては、前半はオープンな展開にはならず、相手も守りを固めてきた中で、チャンスもあまり作れなかったですが、後半は徐々にスペースも空いてきて、チャンスも多く作れてゴールも取れたことは良かったです。スタメンということもそうですが、チームが勝てたことが嬉しいです」

Q:中2日で次節のリーグ戦があります。意気込みをお願いします。
「中2日なので、しっかりリカバリーすることが大切です。次の湘南戦の後、長いブレイクに入るので、しっかり勝って、ブレイクを迎えたいと思います」

■キム ジンヒョン選手

Q:終わってみれば2-0での勝利になりましたが、前半はペースを掴みづらい展開だったように思います。プレーしていてどう感じていましたか?
「そうですね。言われた通り、前半はテンポが上がらなかったです。それでも失点ゼロで折り返したことが大きかったと思います。ハーフタイムにみんなでコミュニケーションを取って、『もっとテンポを上げていこう』という話をしました。ガンバ戦もそうでしたが、相手が試合のテンポを落としてきた時、それに合わせてしまうと、テンポが上がっていかない。今日も前半は徳島がゆっくり試合を進めてきました。これからも相手は分析して、僕らのリズムで試合をするのではなく、自分たちのリズムに引き込もうとしてくると思います。その中でもしっかり自分たちからアクションを起こして、もっともっとテンポを上げていけるような戦いをしていかないといけないと思います」

Q:前半39分、相手のシュートを好セーブで弾いたシーンがありました。あの場面で決めさせなかったことが大きかったのでは?
「ほぼ正面だったので。そんなに難しいシーンではなかったです」

Q:後半の終盤は相手のセットプレーも増えた中、ディフェンスも含めて集中できていた?
「そうですね。メンバーは変わった中でしたが、ガンバ戦でセットプレーからやられた悔しさがあったと思うので、それをこの試合にぶつけられたと思います。自分としては、セットプレーは、誰が出ようが一人一人、自分が責任をもってやらないといけないと思っています。チーム全体の(守る)形もありますが、個人、個人の能力や集中力、責任感を発揮することが大事。しっかり準備できていれば相手に負けることはないので。セットプレーは一人一人が責任感をもってやることが大切です」

Q:今シーズンは、ケガなどを除くと、セレッソに加入して初めて正GKではない立ち位置で過ごしています。日々の練習も含め、どのようなメンタルで過ごしていますか?
「正直、苦しい、厳しい現状ですが、今年で17年目になる中で、第2(GK)という立場がなかったことは、運が良かったと思います。もちろん、自分に厳しく向き合って、練習からしっかりやってきましたが。ここまで試合に出られない状況を経験したことはなかったですが、逆に言えば、16年間、僕の後ろで色んな選手がサポートしてくれました。そういう選手たちの気持ちも含めて、今は耐えながら、自分がやれることをしっかりやらないといけないと思っています。いつ出ても良いように、準備はしています。いつでも試合には出たいので。常にそういう気持ちで最後まで戦いたいと思います」