2024明治安田J1リーグ第37節

2024明治安田J1リーグ

2024.11.30

セレッソ大阪

0

HOME

FULL TIME

2

0-2

0-0

鹿島アントラーズ

師岡 柊生 (10')

鈴木 優磨 (14')

ヨドコウ桜スタジアム

21,171

SHARPサポーティングマッチ

HIGHLIGHTSハイライト

ギャラリー

MATCH REVIEW

ホーム最終戦は勝利で飾れずも、桜の主将・山下達也が最後の勇姿をピッチに刻み込む


1-0で勝利した前節のアビスパ福岡戦から3週間。セレッソ大阪は、今シーズンのホーム最終戦となる鹿島アントラーズとの明治安田J1リーグ第37節に臨んだ。今シーズンをもって退任が決まっている小菊昭雄監督、さらには今シーズンをもって現役引退が発表されている山下達也の花道を飾るため、何としても勝利で終えたい一戦。先発は福岡戦から2人変更。出場停止の田中駿汰に代わりボランチには喜田陽、2トップの一角には第14節以来の先発となる山田寛人が入った。

立ち上がり、ロングボールを交えて攻勢をかけてきた鹿島だが、セレッソもすぐに反撃。分厚い攻めを仕掛けてゴールに迫る。ただし、そうしたリズムが出て来た矢先、先制点を許してしまう。10分、知念慶のミドルシュートをGKキム ジンヒョンがはじいたところを師岡柊生に押し込まれた。すると立て直す間もなく4分後に2失点目。鹿島のCKをクリアしたボールを柴崎岳に拾われると、ファーサイドへのクロスを鈴木優磨にボレーで合わせられ、ネットを揺らされた。いきなりの2失点で苦しい展開になったが、「ここからは自分たちでゲームをコントロールして、たくさんのチャンスを作ることができた」と指揮官も振り返ったように、セレッソがボールを握り、敵陣で試合を進めていく。22分には鹿島DFのクリアミスを拾ったレオ セアラに決定機も、相手GKの好守に防がれた。その跳ね返りを狙った山田のシュートもクロスバーを越えた。その後もセカンドボールを拾って連続した攻撃を仕掛けていったセレッソは40分にも決定機。喜田を起点にカピシャーバ、為田大貴で左サイドを崩すと、為田の折り返しを収めたセアラが反転してシュート。決定的な形に持ち込んだが、惜しくも枠を外れた。

2点のビハインドで迎えた後半も、前半終盤の勢いそのままに、最初に決定機を作ったのはセレッソ。進藤亮佑の1本のパスから背後を取ったセアラが巧みなトラップから前を向き、GKとの1対1を作り出して浮かせたシュートを放つ。ここも決定的な形だったが、再びわずかに枠を外れ、天を仰いだ背番号9。続く53分にもセレッソにビッグチャンス。相手のロングボールをクリアした流れから、喜田、ルーカス フェルナンデスとつなぎ、フェルナンデスが縦に突破。中には山田も待っていたが、自らコースを狙ったシュートを放ったが、GKに防がれ得点ならず。57分にもフェルナンデスのシュートがDFにブロックされた跳ね返りを奥埜博亮が狙ったが、ここでもシュートは枠を捉え切れず。2失点後は再三チャンスを作るセレッソだが、相手の壁は高く、どうしてもゴールを割れない。すると、後半の中盤から終盤にかけては鹿島のカウンターを受けてピンチも続いたが、為田や西尾らが懸命にカバー。GKキム ジンヒョンも好セーブを見せ、3失点目は許さない。攻撃では北野颯太、柴山昌也、山﨑凌吾、上門知樹を投入。3人目の動きやミドルシュートも交えつつ、鹿島ゴールをこじ開けにかかるが得点が遠い。

87分、小菊監督は西尾に代えて山下を投入。この試合が現役選手としてのホームラストマッチとなる背番号23。「ピッチに立って、彼のエネルギーを選手に伝えて欲しかった」(小菊監督)と話す指揮官の思いに応えるように、山下はキャプテンマークを巻いて奮闘。「ヘディングでもっと(バチッと)やりたかったですが、自分の納得いくヘディングはできなかった」と自身は振り返ったが、トレードマークである打点の高いヘディングで相手FWに対応。今できる精一杯のプレーを表現し、チームを盛り上げた。そうした主将の熱量もあり、最後までゴールを目指して戦ったセレッソ。後半アディショナルタイムにはセアラがチャンスを迎えたが、オフサイドもあり、シュートは打ち切れず。反撃の1点は生まれず、0-2で試合は終了した。

試合後は、ホーム最終戦セレモニーとして森島寛晃社長、副キャプテンの西尾、小菊監督が挨拶。この試合が自身ホームでは最後の采配となった指揮官は、時折言葉を詰まらせながら、感謝の言葉を述べた後、「また会いましょう!」と明るく締めくくった。その後、山下の引退セレモニーも行われ、スタジアムは感傷的なムードに。家族への感謝を述べた際は目に涙を浮かべるシーンもあった。最後は力強く、「このチームがJ1リーグ優勝するために何が必要なのか、選手としては分からなかったことをしっかり勉強して、何らかの形でこのチームを優勝に導きたいと考えています」と話すと、ヨドコウ桜スタジアムが大きな拍手に包まれた。今シーズンもラスト1試合。次節、アウェイでのFC東京戦で勝利を収め、30周年イヤーを締めくくりたい。

監督コメント

■小菊 昭雄監督

「今日はホーム最終戦ということで、どうしても勝ちたい試合でした。早い時間帯に2失点してしまい、少しゲームプランが崩れた印象を受けました。ただ、そこから自分たちでゲームをコントロールして、たくさんのチャンスを作ることができたことは良かったですが、鹿島の強固な守備をこじ開ける最後の我々のクオリティー、シュート、クロス、ラストパス、そこで上回ることができなかった。そうしたゲームだったと思います。選手たちは最後まで勝利を目指して、走って、戦ってくれました。そこはベンチから見ても十分伝わりました。残念な結果だったのですが、私たちにはもう1試合チャンスがありますので、最後はセレッソファミリーの皆様と笑顔で終われるように、全員で向かっていきたいと思います」
 
Q:最後の時間帯、0-2というビハインドの状態で山下選手を投入された思いと、彼が見せたプレーについて
「山下選手に対しては、最大限のリスペクトをもって(起用しました)。私も彼にはたくさん助けられましたし、このクラブを引っ張ってくれた感謝の思いとリスペクトを込めて、どういう形であれ、彼をピッチに立たせてあげたかった。ピッチに立って、彼のエネルギーを選手に伝えて欲しかった。勝っていても負けていても、あの時間帯に出すことは決めていました。その中で、彼も満身創痍の中、素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれたと思います。最後まで勝利を目指して、チームをキャプテンとして引っ張ってくれたことに感謝しています。これから彼も、また違う形でチームを引っ張ってくれると思いますので、私の思いを彼に託したいと思います」
 
Q:監督自身もホームで指揮を執る最後の試合だったが、戦い終えた今の心境は?
「私自身もホーム最終戦でした。昨日の練習後まではいつも通りの心境でした。いつも試合前は緊張しますし、不安にもなります。そういう色んな思いで過ごしていました。いつも通りの流れかなと思っていたのですが、夜はなかなか寝られずに、たくさんの思い出が駆け巡りました。スピーチではたくさんのことをお伝えしたかったのですが…。ヤンマーの山岡社長、セレッソの森島社長、梶野強化部長を始め、何もなかった自分を我慢強く育てて下さった。その感謝の思いしかないですし、今日はその感謝の思いを勝利という形でお伝えしたかったのですが、それが叶わず申し訳なく思っています。最後はそうした思いをしっかりと結果で示せるように、また1週間、頑張っていきたいと思います」

選手コメント

■レオ セアラ選手

Q:チャンスもたくさん作りましたが、試合を振り返ると?
「まず、2失点が早かったなという試合でした。その後は自分にもたくさんチャンスはあったのですが、『今日は自分の日ではなかった』、そういう表現になると思います。サッカーではそういう日もあります。チームとしても最後まで諦めずに点を取りにいったのですが、残念ながら取れませんでした。ただ、最後まで戦い抜いたことは、皆さんに見ていただけたと思います」

Q:山下キャプテンは、レオ セアラ選手にとっては、どのような存在でしたか?
「昨年セレッソに来た時から、ぱっと見ただけで経験が豊富であること、クラブに長く在籍していること、それによってチームに安心感をもたらす存在だな、と感じていました。練習中も常にチームメートを鼓舞して励ましてくれていた姿が凄く印象に残っています。彼から色んなことを学びました。これからの彼の人生も実り豊かなものになるように、心から願っています」

■山田 寛人選手

Q:J1リーグでは第14節・FC町田ゼルビア戦以来のスタメンでした。驚きもあったが、自身としては、どのような思いでピッチに立ちましたか?
「僕自身も驚きはありました。2日前ぐらいの練習で分かったのですが、その時は驚きました。ブレずにやってきたことが最後につながったのかなと。いい準備はしてきましたし、練習試合でも結果を残してきたので、パフォーマンスを崩さないことを意識して練習を続けた結果、こうしてホーム最終戦に出られたことは良かったです」

Q:失点の時間帯が早かったことはあるが、自身としてはチャンスメイクやゴールへ向かうシーンなど、いいところも出せていたと思うが?
「そうですね。そんな悪いイメージはないです。失点のところで(ミドルシュートを放った知念選手に)自分が食いついてしまったところは、もう少し引いて正面から受ければ良かったかな、という反省はありますが。外国籍選手とは、今までの練習の中ではどちらかと言えば相手としてプレーしていたので、ここ2、3日の練習で連係を合わせることは難しかったですが、試合では楽しくやれました。点を決めるチャンスもあったので、そこは悔いが残りますが、個人的には、最後にやりがいをもって楽しくプレーできたことは良かったです」

Q:「決めるチャンス」というのは、22分のレオセアラ選手のシュートがGKに止められて、跳ね返りを打ったシュートですね。
「そうです。こぼれてくる、という感覚があり、トラップからシュートは落ち着いてできたのですが。狙っていたところは間違っていなかったと思いますが、距離が少し合っていなかったと思います」

Q:山田選手にとって、山下選手はどのような存在でしたか?
「僕が1年目の時からバリバリやっていましたし、アカデミーの頃から見ていました。僕の中では、ちょんまげやロン毛のイメージです(笑)。最初からずっと優しく接してくれました。今年に入ってからは、家が近いということもあり、サッカー以外のプライベートでも一緒にいることが多く、本当にお世話になりました。頼もしいキャプテン、セレッソの先輩、という感じでした。最後、こうして一緒にピッチでできたことは感謝しかないし、誇りに思います」

■進藤 亮佑選手

Q:最後の時間帯は山下選手とCBを組む形になったが?
「感慨にふけるとか、そういう状況ではなかったです。1点をもぎ取りたい思いだけでした。勝っている状態で出てもらいたかったですし、花を添えられなかった。(引退)セレモニーも気持ちよく涙を流しながら見ていたかったのですが、試合直後だったので、自分の中で悔しさが上回って…。ヤマさん(山下)の引退試合にもかかわらず、このような試合をしてしまい、悔しさしかなかったです。時間が経つごとに、ヤマさんを気持ちよく送り出せなかった悔しさが湧いてきました。申し訳ないなと。ヤマさんはずっと見ていた選手だったので、他の選手の引退とはまた違う思いでした」

■西尾 隆矢選手

Q:山下選手にキャプテンマークを託して交代した時の気持ちは?
「負けている状況だったので、申し訳ない気持ちでした。苦しい時間帯、苦しい状況で渡すことになり…。勝っている状態でマークを渡したい思いがありました。他の選手もそうですが、小菊監督、ヤマさん、そしてサポーターに対して感謝を伝える試合にしないといけないと、試合前からずっと言っていました。そういう試合で勝ち切れなかったことは、自分自身の力不足なので、不甲斐ない気持ちがあります。チーム全体に目を向けても、今年はこういう際(きわ)のところで勝てなかった。大事な一戦でいかに勝つか、強いチームはそういう試合で勝ち続ける。僕らは勝負強さがまだまだ足りないと実感しました。だからこそ、ヤマさんの意思を継ぐではないですが、上を目指してやっていかないといけないと思いました」

Q:どういうところを継いでいきたい?
「良い時も悪い時も、ヤマさんはチームのためにやっていました。苦しんでいる選手に声を掛けたり、人として素晴らしい選手だなと、僕も副キャプテンとしてその姿を見させてもらっていました。僕自身ももっと自覚を持って、ヤマさんに負けないような選手になっていきたいと思います。ヤマさんのチームでの存在感は大きかったので、そういう選手がいなくなるのは寂しいですし、少しパワーダウンしてしまう可能性もありますが、そこは僕ら若い世代が引っ張っていかないといけない。来シーズンに向けて、もっともっと頑張らないといけないと思います」

Q:(山下選手は)凄く動けていましたが、そのプレーぶりを近くで見て、感じるものもありましたか?
「そうですね。今シーズンはなかなか試合に絡めず怪我も多かったと思いますが、練習ではチームの中でも一番動くというか、どんな練習でも100%を出します。ダラダラとすることが全くない。だからこそ、若手の僕らはその背中を見て食らい付いていくしかなかった。一番上のヤマさんがやるから、僕らもやらないといけないという気持ちになりました。頼りになる存在なので、今日も入った時に安心して見ていました」

■山下 達也選手

Q:後半アディショナルタイムを含めて最後の10分ほどプレーされました。激しく競る場面もあり、力強さも感じたが、ホームラストマッチを終えた心境は?
「僕みたいな選手にサポーターが試合前から23のコレオを作ってくれて、感動的でした。(プレーに関しては)正直、ふくらはぎが限界だったので、どうなってもいいと思ってプレーしました。ヘディングでもっと(バチッと)やりたかったですが、自分の納得いくヘディングはできなかったですね(笑)。最後、カードを貰うつもりはなかったですが、気持ちみたいなものは見せられて良かったかなと思います」

Q:スピーチを含めてセレモニーに関しては?
「大丈夫でしたか?(笑)。大体は(言うことを)決めて臨んだのですが、全部は伝え切れなかったと思います。両親も兄もスタジアムに来てくれていました。感謝しています」

Q:花束贈呈では、茂庭照幸さん、石神直哉さん、丹野研太選手、柿谷曜一朗選手と懐かしいメンバーが揃ったが?
「嬉しかったですね。僕のために来てくれたのか、ついでだったのか分からないですが(笑)」

Q:北海道コンサドーレ札幌でプレーした河合竜二さん、柏レイソルでプレーした大谷秀和さん、清武弘嗣選手、丸橋祐介選手からのビデオメッセージもありましたが、そういった方々に関しては?
「河合さんには、札幌で本当にお世話になりました。ピッチ外でも社会人としてのマナーを教えていただいて勉強になりました。大谷さんは、ザ・キャプテンという感じで、Jリーグ全体でも1番のキャプテンだと思っています。キヨ(清武)のメッセージも感動しましたし、マル(丸橋)が出てきた時は、昔あまり試合に出られなかった時代のことを思い出しました」

Q:今後について
「引退後もこのクラブで何かしら貢献したい気持ちを持っています。J1リーグ優勝という目標に向かって、どの立場でも、どんな仕事でも、しっかり積み上げながらやっていきたいです」