2023明治安田生命J1リーグ第20節

2023明治安田生命J1リーグ

2023.7.8

サガン鳥栖

堀米 勇輝 (64')

富樫 敬真 (90+3')

2

AWAY

FULL TIME

1

0-1

2-0

セレッソ大阪

レオ セアラ (13')

駅前不動産スタジアム

7,762

ギャラリー

MATCH REVIEW

前半は良い入りで先制するも、後半は鳥栖に主導権を握られ、無念の逆転負け。上位との差が開く痛恨の連敗に

 前節のアビスパ福岡戦から中7日。セレッソ大阪は、敵地に乗り込み、サガン鳥栖との明治安田生命J1リーグ第20節に臨んだ。先発は前節から1人変更。毎熊晟矢が復帰し右サイドバックに入り、前節は右SBでプレーした進藤亮佑がCBに戻った。

試合前から降り続いた大雨の影響により、試合開始時は主にピッチの中央に水溜まりが生まれ、ボールも止まる環境下でのスタートに。そうした中、セレッソは比較的ボールが動くサイドを徹底して活用。特に右サイドのジョルディ クルークスを起点に攻め込む。開始から3本連続してCKを獲得するなど良い入りを見せると、13分、先制に成功。ショートコーナーから、香川真司のリターンを受けたジョルディ クルークスの正確なクロスにファーでレオ セアラが合わせた。16分にも右サイドを崩してチャンスを作ると、23分、今度は左サイドのカピシャーバの突破からのクロスに加藤陸次樹が飛び込む。前半、セレッソはレオ セアラと加藤の関係性も良く、2トップが相手の背後へ抜けてゴールに迫る形を何度も作った。26分には、香川のパスに抜け出した加藤が右サイドを突破し、ビッグチャンスにつなげた。前半の終盤こそ相手に握られる時間帯もあったが、前半はスコアだけではなく、シュート数、ボール支配率と全てのスタッツでセレッソが鳥栖を上回る内容で終えた。

ただし、後半に入ると、試合の様相は徐々に変化。依然として雨は降り続くも次第にボールが動き始めたピッチコンディションに合わせるかのように、鳥栖は後半開始から普段通りのつなぐサッカーを展開。前半はボールが止まっていた中央でも起点を作り始める。そうした中、セレッソは前半と同様にサイドを中心に攻めると、ジョルディ クルークスやカピシャーバがミドルシュートでゴールを狙う。ただし、つなぐのか、蹴るのか。そのあたりの判断が選手個々で少しずつ曖昧になっていったセレッソに対し、鳥栖は選手交代でさらにギアを上げると、64分、セレッソは自陣でボールを失い、ショートカウンターを受け、失点。同点に追いつかれてしまう。ここから疲れの見えた両サイドハーフの選手を代えながら、セレッソも下からつないでゴールに迫る。終盤はオープンな展開となり、両チームが勝点3だけを目指して戦うと、後半アディショナルタイム、セレッソは香川、中原輝とつないで真ん中で起点を作り、サイドへ展開。最後は途中出場の山中亮輔のクロスにゴール前でレオ セアラが決定機を迎えたが、ここはシュートがGK正面に。すると、ここから鳥栖のカウンターを受け、左サイドを突破されると、最後はクロスに逆サイドから走ってきた富樫敬真に頭で合わせられ、土壇場で失点を喫した。

湿度が高い中、刻々と変化する天候やピッチコンディションへの対応が迫られる難しい試合になったことは確かだが、前半と後半で内容が変わってしまったセレッソは痛恨の逆転負け。上位の背中が遠のく連敗を喫してしまった。それでも試合後、指揮官は、「どのシーズンも波はある。今年も第3節を終えて1分2敗で17位から、選手たちの頑張りのおかげで5位にいる。今シーズン2回目の試練をしっかり乗り越えていきたい」と話し、前を向いた。次週は大宮アルディージャとの天皇杯3回戦、浦和レッズとのJ1第21節と、いずれもホームで連戦が控えている。今こそチームが団結力を発揮するとき。「もう一度、自分たちで強固なグループとして、今年の目標に向かって次の天皇杯、リーグの浦和戦へ臨みたい」(小菊監督)。

監督コメント

■小菊昭雄 監督

「天候、ピッチコンディションが非常に変化していく中、湿度の高さもあり、難しいゲームになりました。その中で、選手たちは、引き分けではなく最後まで勝点3を目指して戦った結果、カウンターから最後に決められてしまいましたが、私は勝ちにいく姿勢を交代選手にも、ピッチにいる選手全員にも求めましたので、そこに後悔はありません。ただ、こういったゲームで勝ち切る、決め切る。その少しの差が大きな差になってきますので、そこはまた全員で向き合ってやっていきたいと思います」

 

Q:試合中にピッチコンディションが変わり、後半はボールが動き、鳥栖のスピーディーな攻撃を受ける展開になった。そうした中で、試合中における対応に難しさもありましたか?

「まず、前半は、選手たちはゲームプランを全うしてくれました。CKの数が物語るように、2トップとサイドハーフの4選手のクオリティー、質的優位を生かしていくこと。あとはピッチコンディションも踏まえて、ポケット、ニアゾーンを徹底して突いていく。少し理想の形ではなくても、そのサッカーを全うしようという前半でした。内容、チャンスの数も含めて、非常にいい前半でした。ただ、後半、仰る通り、びっくりするほどピッチコンディションの回復が見られました。後半も天気予報の情報を集めたところ、まだ雨が降り、風が強いと。『後半も同じようにやっていこう』という中で、ピッチの回復がありました。『自分たちもボールをつなごう』という矢先に同点ゴールを決められました。そのあたり、サイドからの私のゲームプランの徹底が少し遅れました。そこは私の責任だと思っています」

 

Q:先制点はCKから決めた一方で、10本以上あった機会を生かし切れなかった思いも残ります。もう一つ、二つ精度を高めていくために必要なことは?

「リスタートの部分では、CKからデザイン通りのゴールを決めることができたことは嬉しく思います。ただ、確かにあれだけの本数がありましたので、まだまだ狙いとする形を成功させる回数、クオリティーを上げていかないといけません。いいキッカーもいますし、ヘディングが強い選手もいますので、まだまだリスタートからの得点は増えると思いますし、練習していきたいと思います」

 

Q:湿度が高く、どうしても足が止まりがちになる中、選手交代に関しては、リードされている鳥栖が先に動く形となりました。交代のタイミングについて振り返ると?

「これだけのピッチコンディションの回復もあり、鳥栖がしっかりボールをつなぎ出したので、失点の直前、ヨニッチを入れて(後ろを)5枚にする準備をしていました。もうあと1分、2分、耐えてくれたら5枚の選択肢もあった中で失点してしまったので、5枚でしのいでカウンターでトドメを刺すプランは崩れました。そこからは、交代でフレッシュな選手を入れて、勝ちを目指して戦いました。その中で、交代選手も難しい状況だったと思いますが、それぞれが良さを出してくれました。いまチームは主力のケガ人が相次いでいるのですが、ここから天皇杯、中断前の浦和戦と、みんなで総合力を高めて2連勝して、中断期間に入りたいと思います」

 

Q:連敗は第2節、3節以来だが、率直にどう思われますか?

「先ほど選手たちにも伝えたのですが、私も長年、トップチームに関わっていますが、どのシーズンも波はあります。昨年も苦しい期間はありました。今年で言えば、第3節を終えて1分2敗で17位でした。非常に厳しい状況でしたが、選手たちがブレずに日々のトレーニングを大事にして、高い競争で頑張ってくれたおかげで、いま5位という状況にいます。今シーズン2回目の試練だと思っています。必ず波は来る中で、自分たちでしっかり乗り越えて、高めていく。崩れるのは簡単ですし、私自身、そういったシーズンも見てきました。もう一度、自分たちで強固なグループとして、今年の目標に向かって次の天皇杯、リーグの浦和戦へ臨むことが大事だと思っています」

選手コメント

■レオ セアラ 選手

Q:最後の場面は勝ち越すチャンスもあっただけに、決めたかった?

「そうですね。勝利を常に求めて戦っているので、あそこで決めて勝ちたかったですが、最後にやられてしまったことは、もう少し賢くやらないといけなかった。僕たちが点を取りかけた攻撃の後にカウンターを受けて失点したのですが、ファウルするなり、何とか止めないといけなかったと思います。来週は天皇杯という大事な試合もあり、タイトルにつながる大会なので、しっかり勝ち進みたいと思います」

 

Q:先制点となった今季8ゴール目については?

「練習からやってきた形だったので、それを試合で出せたことは嬉しかったですが、勝利につなげたかった、というのが本当の気持ちです」

 

■ジョルディ クルークス 選手

Q:最後は悔しい結果になったが、試合を振り返ると?

「前半はいいサッカーができました。このままいけば勝てる、というサッカーができていたと思いますが、後半は違うサッカーになってしまった。勝ち切れなかったことは残念ですが、顔を上げて、次の試合に向けてやっていかないといけません」

 

Q:前半、自分たちの流れの時間帯で2点目が欲しかった?

「当然、先に2点目が入っていれば違う展開になっていましたが、前後半で内容が変わることは、サッカーではよくあること。この敗戦を糧にして、次に向けて頑張りたいです」

 

Q:アシストは見事なクロスでしたね。

「そうですね。いいクロスを上げることができました。いっぱい練習しているので、その成果が出たことは、純粋に嬉しかったです」

 

■香川真司 選手

Q:リードしている状況でピッチ状態が刻々と変わり、どう試合を進めていくか、難しさもあったと思う。リード時の試合の運び方で、どうすれば良かったという思いはありますか?

「なかなか今は答えが出ないですが、勝っていた状況だったので、逆転負けはいただけない。最後は耐えないといけなかった。後半の戦い方においては、もう一つ二つ、チームとしてオプションをもつ必要はあるだろうし、課題は残りましたが、最後は攻めにいった結果、やられた。こればかりは、それもサッカーですが、負けたので、改善していかないといけないです」

 

Q:今季2度目の連敗。次節はより負けられない試合になる?

「そうですね。次、中断前の浦和戦はホームなので、絶対に勝つ必要があります。ただ、連敗している事実もあるので、改めて課題と向き合いながらやらないといけない。その前には天皇杯もあるので、しっかり準備したいです」

 

■毎熊晟矢 選手

Q:前後半でピッチコンディションが変わる中、前半はボールが走らない中、スペースを狙って、CKを取って、うまく試合を運べていたと思うが?

「そうですね。ピッチコンディションはアップで分かっていたので、(第12節)鹿島戦のときのような、あの試合で相手が徹底してやってきたことを、今度は自分たちが徹底してできました。ハーフタイムでは、徐々に乾いてきていたので、『つなごうか』という意見も出ていたのですが、また雨脚も強くなる予報もあったので、まずは戦い方を変えずに泥臭く戦うプランで入りました」

 

Q:後半の途中からピッチも乾き、ボールが動き出し、鳥栖の攻撃も変わった。その対応に難しさもありましたか?

「鳥栖さんの方が先に『下でやろう』という意図が見えました。そこで相手の勢いも感じたので、中でやっている選手やベンチとのコミュニケーションで、自分たちのペースにもっていくためにも、乾いているサイドのスペースなどで、自分たちの時間をもう一度、作ることを考えないといけなかったと思います」

 

Q:最後は打ち合いになった中で失点したが、最後まで勝利を目指して戦った結果?

「そうですね。正直、引き分けは要らないと思うので。取りにいって、最後、取られましたけど、次、同じような状況で1-1でも、リスクを負って取りにいくべきだと僕は思います」

 

Q:右サイドの攻撃は、前半のあのピッチコンディションでもうまくやれていたと思うが?

「やれた部分もありますが、サイドは最初から乾いていたので。自陣ではチームの規律を徹底することは大切ですが、押し込んだ相手陣地では、もっとサイドで起点を作るプレーは増やさないといけなかったと思います」

 

■進藤亮佑 選手

Q:ピッチコンディションが後半になるつれ変わっていった。その対応に苦しんだ試合になった印象だが?

「前半と後半ではピッチ状態も変わり、後半はよりクリーンになりました。ハーフタイムでは、『また雨が強く降ってくるからシンプルにやろう』という話でした。そのつもりで入りましたが、意外と相手がつないできたので、僕らもできるかなと。僕の中では少し迷いがありました。正解はないですが、相手がつなぎ始めてから、相手のペースになったと思います」

 

Q:そのあたり、後半の戦い方の、チーム全体での意思統一が難しかった?

「真ん中は分からないですが、グラウンドは良くなっていたので、結果的に言えば、サイドを中心につなげました。ただ、試合中に全員で集まって話し合って、『今からつなごう』と言える時間はない。そこは個人の判断、経験値が問われます。結果的に、1失点目も僕がボールを取って、前半であれば、アバウトに蹴り出していたのですが、ピッチ状況も改善されたので、もう一つ多くドリブルというか、相手をはがす選択をした。結果的にあのプレーから失点して、逆転負けを喫してしまった。一つのプレーの選択ミスで逆転までされてしまう、改めて、ワンプレーの重みを感じました」