天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会
3回戦

2016.9.22

サガン鳥栖

34' 豊田陽平75' 富山貴光

2

AWAY

FULL TIME

0

1-0

1-0

セレッソ大阪

ベストアメニティスタジアム

レポート

J2リーグ第32節・ギラヴァンツ北九州戦 から中3日の9月22日、セレッソ大阪はJ1・サガン鳥栖との天皇杯3回戦に臨んだ。この試合の後、中2日でJ2リーグ第33節・徳島ヴォルティス戦が控えているとあって注目された先発だが、北九州戦から5人を変更。北九州戦では玉田圭司、酒本憲幸、ソウザで構成された前線の1トップ2シャドーをそっくり替えて、1トップにリカルド サントス、右シャドーに清原翔平、左シャドーに関口訓充を配置した。ほかにも、右のウィングバックを松田陸から椋原健太に、3バックでは藤本康太を帯同させず茂庭照幸を起用した。北九州戦でケガから復帰し、決勝点を決めた杉本健勇は、この試合もベンチからのスタートとなった。

 セレッソにとって、2014年のリーグ最終節以来となるJ1クラブとの対戦。前半は、「相手がJ1だから少し萎縮していたのかわからないけど」と山口蛍も振り返ったように、終始、鳥栖に圧倒された。リズム良くボールを回され、守備でボールの取り所が定まらないセレッソは、攻撃でも出足鋭い鳥栖のプレスに押され、思うようにボールをつなげない。セカンドボールもことごとく拾われると、縦への意識が強く、前に出て行く姿勢に迷いがない鳥栖の攻撃を耐える展開が続いた。
 それでもなんとか失点はしのいでいたが、31分、鳥栖の左サイドからのクロスに対して、ファーサイドで丸橋祐介が鳥栖FW豊田陽平ともつれるようにして倒れる。ボールとは直接関係のない場面だったが、飯田淳平主審は丸橋が豊田を倒したとしてファウルの判定。鳥栖にPKが与えられた。このPKを豊田に決められ、34分、セレッソは先制を許した。
 直後の36分にも、鎌田大地のクロスから豊田にヘッドでゴールを脅かされるも、ここはキム ジンヒョンの手をかすめてクロスバー。失点は免れた。防戦一方の前半を過ごしたセレッソだが、終了間際に反撃。44分、高い位置で山村和也がボールを奪うと素早く清原へ。清原は後ろから追い越してきた椋原にパスを送ったが、オフサイドで好機を逸した。45+1分にも、丸橋のクロスにリカルド サントスが競ってこぼれたボールを拾った清原が決定的なシュートを放ったが、今度は鳥栖DFにブロックされた。

 後半開始から大熊清監督は清原に代えて杉本を投入すると、47分に山口、50分に杉本とセレッソは立て続けにシュートを放つなど、相手ゴール前にボールを運ぶシーンが増える。58分には鳥栖の鋭いカウンターから金民友にGKとの1対1の場面を作られたが、キム ジンヒョンが阻止。58分、大熊監督は茂庭に替えてソウザを投入。システムを4ー2-3-1に変更すると、ここからしばらくはセレッソが鳥栖を押し込んだ。62分にはソウザが得意のフェイントで切り返してクロス。ファーサイドでリカルド サントスが合わせたが、へディングはポスト右へ外れた。64分にも鳥栖のゴール前での素早いパス回しから、最後は山口の速いクロスがゴール前のリカルド サントスに届けられたが、このシュートもポスト右に外れた。
 この2度の絶好機を逸すると、75分、途中出場で右サイドバックに入っていた酒本が攻撃参加したところでパスを奪われてカウンターを受けたセレッソは、空いたサイドのスペースを鳥栖に鮮やかに攻略され、富山貴光に追加点を許してしまった。

 それでもあきらめないセレッソは、79分、山口の縦パスを受けた杉本がエリア外から思い切り良くミドルシュートを放つもクロスバーを直撃。以降も関口のミドルシュート、リカルド サントスのボレーシュート、ソウザの直接FKと、最後まで鳥栖を攻め立てたセレッソは、後半は相手の6本を上回る11本のシュートを放った。
 最終的には決定力の差がスコアに反映されたとも言える試合だが、内容全般を振り返れば、鳥栖から学ぶことは多かった。守備で奪いに行くアプローチの速さと力強さ。攻撃でカウンターに出た時の速さと意思統一。これらのプレーを複数の選手が連動してやり切る組織力は、鳥栖が一枚上手だった。
 この敗戦により今季の天皇杯の歩みは終わってしまったセレッソだが、「ただ負けて終わりにしないように、チームとしても自分としても、今日の負けを生かさないといけない」(清原)。この日味わった課題と収穫をしっかり吸収して、J1自動昇格が懸かった残りのJ2リーグ戦につなげていくことが求められる。

監督コメント

「前半に関しては、ある程度、守備はできたんですけど、攻撃ではフィニッシュで終わるシーンがなくて、後半に選手を入れ替えてギアを上げることを考えていました。
 後半はボールは持てているが決め切れないなかで、我々が前に人数をかけざるを得ない時にカウンターから失点した。取るべき時間帯に取っていないというところと、やはりJ1の決定力を非常に感じたところです。それと、我々が学ばないといけないのは、やはりカウンターの威力というところです。我々もシステムに関係なく、ここぞというところで長い距離を走ること、もう少し飛び越えていくというところも学べた部分です。決定力と、長い距離を走る頑張りは、我々が今後戦っていく上で、参考にして積み上げていかないといけないと感じました。今日、身に染みた部分でさらに力を付けて、リーグ戦に切り替えて1試合1試合やっていきたいと思います」

Q:ベストメンバーで臨んできたサガン鳥栖を相手に、ゲームプランや手応えは?
「次に中2日でアウェイでのリーグ戦(徳島戦)があり、個人のパフォーマンス的に連戦で少し動きが落ちる選手もいたので、次を考えて、さらにこの試合に勝つために新しい力を注入すべきということで、コーチとも相談して、新しい力を入れて、この試合に臨んだという経緯があります。それがいい部分もあれば、コンビネーションの部分でうまくいかない部分もありました。この経験をリーグ戦に生かしてくれると思っています。残念ながら天皇杯は負けましたが、この経験を生かして、10人、18人だけではなく、総合力でリーグ戦に集中して臨みたいと思います」

Q:いい手応えもあったのでは?
「いや、サッカーは、持っているとか、やれたとかは関係ない。決め切るところとか、こういう試合を勝ち抜ける力を付けないといけないと、つくづく感じています」

選手コメント

●山口蛍選手
「(Q:前半は少し相手の攻撃や寄せの速さに苦しんでいた部分もあったように見られましたが、後半はしっかりと相手を押し込めたと思いますが?)
できた部分もあったので、正直、0-2で負けた感じはしないです。前半は、ボールをつなげるのにできなかったというか、相手がJ1だから少し萎縮していたのかわからないですけど。つなげるということは試合の中でもかなり伝えていたけど、どうしても焦って前に無理に入れたり、クロスも相手に当ててしまったりしていた。前半はもっとつなげるのにできなかったので、後半はそこをもっとやろうよと話しながら臨んで、自分たちがボールを持てる時間も続いて、そのなかでチャンスもありました。それを決めていれば試合はわからなかったかもしれません。そこで相手は決めてきた。J1とJ2の差だと思います。でも、自分たちもできるということを後半は見せた部分はあるので、もっと前半から勇気を持って戦わないといけなかった。ただ、自分たちがボールを持っている時でも、単純なパスミスやトラップ、ドリブルのミスもあった。単純に取られてしまう部分もあった。鳥栖は金民友選手にしても、ドリブルでしっかりキープしていました。そういうところの違いは感じたので、そういうところを向上させていけば、もっといいチームになると思いますし、J1相手でもできると思います」

●ソウザ選手
「勝つためにここに来たのですが、全てを出したなか、残念ながら勝つことができなかったです。
(Q:ソウザ選手も途中出場した後半は、チームとして互角以上に戦えていたと思いますが?)
それでも、遅かったという感覚はありますね。自分が入ってからの時間帯では、自分のやれることはやろうと思っていました。
(Q:ソウザ選手にとっては、日本のトップカテゴリーの相手と初対戦でしたが?)
相手が上のカテゴリーだろうと怖さはないですし、J1であろうがJ3であろうが、関係なくやれると思います。
(Q:リーグ戦に向けて、改めて気持ちを聞かせてください)
今日の敗戦は悔しい気持ちでいっぱいなので、まずはそこから立ち直ること。2日間でしっかり準備して、次の試合(9/25・日・@鳴門大塚)に備えたいと思います」

●清原翔平選手
「前半、ああいう形で失点してしまって、前半のうちに追いつきたかったですけど、相手も運動量が多かった。後半、相手の足が止まってきた時に、1点を返すことができればまた違ったのかなと。後半はいい流れだったし、自分たちの時間で押し込んだ時に決め切りたかったですね。カウンターから2失点目を食らったんですけど、ああいう形は相手の得意なパターンというか、狙い通りだったのかなと思います。その前になんとか1点欲しかったですね。
(Q:前半の相手の寄せの速さや、試合を通してのカウンターの速さについては、普段のJ2では味わえないものでしたか?それをリーグ戦に生かせそうな部分もありますか?)
そうですね。スイッチが入った時のボールを取るプレスの速さは、J1の中でもストロングな部分なのかなと思いますし、自分としてもそういう相手にしっかりプレスを外すところは、試合前から課題として臨みました。実際、プレスの速さはJ2では味わえないレベルでしたし、そういうチームとやれたことを、次に生かさないといけない。ただ、負けて終わりにしないように、チームとしても自分としても、今日の負けを生かさないと、今日の意味がないと思います」

●リカルド サントス選手
「試合内容だけを考えたら五分だったと思います。自分たちがしないといけないサッカーはできたと思います。J1を相手に難しい試合になることはわかっていましたけど、ウチもチャンスを作れたし、そこは良かったと思います。決めたか決めなかったかの差が出ただけだと思います。自分としてもハッキリしたチャンスが2度あって、少なくても1つは決められたと思う。少し悲しいですね。勝てる試合でもあったと思うので。
(Q:後半迎えた2度のチャンスは、試合が終わっても悔しさは残りますか?)
惜しかったですけど、自分の全力は出したつもりです。残念ながら、入りませんでした。自分が決めていれば、流れは全然違ったと思います。
(Q:中2日で来るリーグ戦について)
J1昇格という目的から外れないように、自分たちの道を外さないように、やっていきたい。自分たちが勝ち続けていけば、上位のチームに追いつくことはできる」

●丸橋祐介選手
「前半は、相手のプレスも速かったし、多少、自分たちの入りも悪かった。その中でPKを与えてしまったので、申し訳ないです。後半は結構チャンスもあったが、そこで決めることができなかったことも残念でした。
(Q:PKを与えた場面については、少し相手を引っ張ってしまったのか?)
そうですね。お互いやり合う中で、少しそういうところはあったかもしれないので、PKも仕方なかったのかなと思います。
(Q:久々のJ1相手でしたが、やれる手応えもあったのでは?)
チャンスは作れましたし、そこで決め切れなかったことが課題です。もっと質を高めてやっていきたいと思います」

●杉本健勇選手
「まず、悔しいというのが一番。相手にもチャンスを作られたけど、こっちもチャンスを作った場面もあった。そこで決めることができなかったのがダメなところでした。自分にもシュートチャンスはあったので、チームの力になれなかったのが悔しいです。
すぐにリーグがありますけど、今日の負けは本当に悔しいです。次の試合にこの悔しさをぶつけるしかないですけど、ここで負けたことを簡単に考えてはいけない。リーグ戦に切り替えて、ということはそのとおりなんですけど、本気で優勝を目指していた天皇杯で負けたことはしっかり捉えないといけない。相手がJ1で、2ndステージは調子がいいからと言って、負けても仕方ないという空気が流れていたら、このチームはダメだと思う。ただ、現実的に中2日でリーグ戦は来るので、しっかりリーグ戦に向けて、準備したいと思います。
(Q:連戦になりましたが、ケガをしていた箇所は?)
そこは大丈夫です」

●キム ジンヒョン選手
簡単には行かれてないとは思うけど、運もあるし、決められるところで決められなかったのは、点が入っていれば流れが変わったと思う。後半20分くらいはセレッソのペースだったし、得点チャンスも何度かあったので、そこで決めていれば…という流れでした。
そこで決めきれなかったので、相手に2点目を入れられてしまったと思う。
試合が終わって、本当に悔しいですが、来年に向けて目指しているJ1のチームと戦ったことで、こういう試合をやったらダメと思いました。自分たちはJ1に昇格することしか考えていないので、反省するところは反省して、すぐリーグがあるので、切り替えて、絶対に負けないという気持ちで行こうとみんなに言いました。
リーグ戦が一番大事なので、しっかり切り替えて行きたいと思います。

●山村和也選手
特に前半相手が圧力をかけてきている中で、1人1人の距離感が遠くなってしまったところと、守備に追われすぎたせいで攻撃に移った時のバランスが良くなかったと思います。
J1のチームと対戦して、縦パスの質や一つ一つの球際の強さなどの差はJ2と違うところがありましたが、またJ2のリーグ戦に戻るので、しっかりJ1と戦えるようなチームとして成長できるようにしていきたいと思います。
移動、移動になりますが、こういった試合間隔もこれからあると思うので、しっかり休みながら良いコンディションで試合を迎えられるようにしたいと思います。

●関口 訓充選手
相手はJ1のチームで、リーグ戦を戦っているメンバーがそのまま出てきたので、これがやっぱりJ1の力だと思う。久々にそういう相手とやれたのは良かったと思う。でも力の差はあるなと思います。
J2だとボールを取りに行った時に、相手がミスをしてくれたりで取れている部分もありますが、今日の前半に関しては取りに行っても簡単に外されたり、上手くはまらないシーンが多々あった。上手くリズムに乗りきれない時間帯があったので、そういう意味ではチームとしてもJ1に上がった時にこういう相手がいるというのを久々に感じられて良かったと思います。
昇格した時にこういうチーム、J1でも中位にいるチームがコレくらいの力があるというのを肌で感じられたので、もっともっとチームとしても個人としてもレベルアップしていかないと、J1で戦って行くには厳しいのかなと思います。
後はリーグしか残っていないので、しっかり勝てるように準備したいと思います。