ACL
ラウンド16

2011.5.24

ガンバ大阪

0

AWAY

FULL TIME

1

0-0

0-1

セレッソ大阪

高橋 (88')

万博記念競技場

NaN

レポート

ガンバは2006年から5回目の出場で2008年からは4年連続出場、2009年には優勝も手にしている。それに対し初出場のセレッソは、グループリーグで試合を重ねるごとに力をつけてきた。チームを率いるレヴィー・クルピ監督は試合前、「今日は特別なゲーム。歴史に名を刻むために勝利したい。ベンチ外の選手も含め全員一丸となって勝利を勝ち取る」と誓い、キックオフを迎えた。
最近、立ち上がりの時間帯や前半に失点してしまうことが多かったセレッソ。また、精神的支柱の茂庭キャプテンが警告の累積でこの試合は出場停止。不安がよぎりそうになった。が、開始30秒でそれは打ち消された。
乾が、「ゼッタイに負けない」とばかりに、相手DFに勢いよくプレッシャーに行く。スリッピーなグラウンドが手伝って、ラフ気味なファウルでイエローカードが出たが、この試合にかける気合いがこもったプレーに、スイッチが入った。
厳しいチェックでボールを奪い、流れるようなパス回しからゴールへの意識がどんどん出始め、立ち上がり10分間は相手にサッカーをさせない戦いをみせる。徐々に相手もペースを掴みそうになるが、運動量に個人技を織り交ぜながらの攻撃に対して、相手が手を焼いていることは明らかだった。
相手の攻撃に対しては前線からの1トップのホドリゴ・ピンパォン、3シャドーの倉田、清武、乾がボールへの寄せを徹底すると、ダブルボランチのキム・ボギョン、マルチネスがサポート、サイドに振られても両SBの高橋大輔、丸橋がしっかりケア、相手のやっかいな攻撃陣にはCBでキャプテンマークを任された上本、アドリアーノを一番知る男、藤本が立ちはだかり、シュートを打たれても守護神キム・ジンヒョンがゴールを割らせない。前半を0-0で折り返した。
後半は、乾と倉田に代えて、FW小松とボランチに中後を投入、4-2-3-1から4-4-2のシステムに変更。2トップにピンパォンと小松の高さを加えて攻撃的な圧力をかけ、ボギョンを右に、清武を左の2列目に配置転換し、得点を狙っていくことを指示。DF陣の前に中後を配置することでリスクマネージメントを指示。
長身のFW小松にボールが収まると、相手の守備陣がバタバタしだし、ボールを回しながら長短のパスを連係よく回すことで、相手の足が止まりだした。相手も意地を見せて責めるが、藤本、上本、ジンヒョン3人の身体能力の高さと経験と気持ちは相手を上回るものであった。
一発勝負のノックアウトゲーム。0-0のスコアレスドローで進む中、選手たちが延長も考え始めた時だった。88分、中央のマルチネスから右のボギョン、ボールキープの間にオーバーラップで駆け上がってきたダイナモ高橋へボールが出る。ペナルティーエリアには、小松とピンパォンが、そしてファーからも清武も上がってきている・・・クロスかと思った瞬間、狙いを定めたクロスシュート! 角度のない難しいコースに“ゴラッソ”(すばらしいゴール)が突き刺さった。一目散にゴール裏のセレッソサポーター席に走っていく高橋。ウォーミングアップをしていた選手たちも駆け寄り、喜びを爆発させた。
アディショナルタイムは3分、ピンパォンに代えて最後の交代カードは播戸、勝利の方程式が出来上がった。試合終了のホイッスルと同時に、ベンチ外だった選手たちがスーツ姿で歓喜し飛び跳ねながらピッチへ。ユニフォーム姿の選手たちと抱き合った。まさに試合前の監督の言葉通り、全員で勝ち取った勝利だった。
 セレッソ大阪の、そしてACLの歴史に新たなページが書き記された。大阪ダービーとしては2005年天皇杯準々決勝戦以来の、実に5年半ぶりの勝利で次のラウンドに駒を進めることになった。ベスト8入りを果たしたセレッソだが、ここで満足している選手は1人もいない。「ACLとJリーグ優勝というデッカイ目標に向けていく」と、誰もが思っている。

監督コメント

「みなさん、こんばんは。予想通りガンバは非常にバランスのとれたチームで、厳しい試合になりましたが、最後に勝利をおさめたのは、よりひたむきに、勝利という結果にこだわった我々が勝つ、今日このガンバから勝利をおさめるチャンスを得たと思って、今日の試合に臨みました。ガンバのようなバランスの非常にとれたチームに対して勝利をおさめるためには、自分たちのもっているものをすべて出して、さらにはイージーミスを極力減らさなければならない、それがしっかりできたからこそ、この勝利をおさめることができましたし、何よりも最後まで戦った選手、応援してくださったサポーターの皆さんにこの勝利を捧げたいと思います」

Q 後半立ち上がりに2枚カードをきって、流れが変わったかと思うが、2人を投入した理由は?
A 「前半のパフォーマンスが良くなかったというのが理由のひとつです。シャドーの選手、1トップのピンパォンも含めて、ほとんど決定機を前半作れなかったというのが理由です。中後を入れて、中盤のディフェンスを強固なものにするということ、そして彼が入ることによって、マルチネスとボギョンがより攻撃的にプレーできるということですね。またさらに小松を投入することで、彼のスピードをいかす、これが狙いでした。おっしゃるとおり流れを変えることが出来ました。ひとことでいえば、より手堅いサッカーに変えることが出来たと思います」

Q この試合に向けて相当集中してやってこられたと思いますが、試合終了のホイッスルを聞いた瞬間の気持ちと、選手たちの集中力についてどう感じておられますか?
A 「本当に勝利の、最後の笛を聞いたときは、感極まるというか、本当にうれしかったです。なぜならば、このダービーの勝利というのは、サポーターの皆さんが長い間待ち望んでいた勝利だと思うんですね。ガンバというのはもう10年近く同じ監督の下で、ガンバのサッカーというものを確立した、本当に勝負強いチームで、経済的な基盤も我々よりはるかに強固なものを持っていらっしゃるんですけれども、そういったなかでピッチの中で勝利をおさめるということが可能なんだと選手たちが証明してくれた、これが何よりうれしかったです。今日の勝利をチームのサポーター、フロント、選手、スタッフ、みんなで喜びを分かち合えるんだ、というその思いがまず頭をよぎりました。この試合のことは、生涯忘れることはない、と思います。選手たちの集中力については、ほぼ非の打ち所がないといいますか、きわどいシーンはありましたけれども、やはり最後の最後で止めるという、集中力を見せてくれた選手たちは本当に見事だったと思います」

Q 小松選手が出てきて、小松にロングボールを入れてといういつものセレッソとは違った戦い方でしたが、先ほど監督が言われた「手堅いサッカー」というのは多分そういうことだと思いますが、そんなサッカーをしたということについてどう考えておられますか?
A 「まず、この質問に答える前にお話しておきたいのは、日本チームの何チームかが試合の前にピッチに水をまかれるんですが、これは私は賛成できないことなんですね。なぜかというと、試合開始早々の乾のイエローカードですが、あれは決して相手を、コンタクトの激しさから言えば相手が大怪我を負ってしまったかもしれませんが、決して彼はそういう意図があったわけではなく、彼はただ滑ってしまっただけなんですね。私はサッカーをするのに最高のコンディションは、乾いた芝の上で、ノーマルな芝生の上でやることだと思いますが、なぜわざわざ水をまかなければいけないのか、それは私には納得いかない点です。そういうグラウンドで試合をするとどういうことになるかというと、ご覧になった通り、ボールがなかなかおさまらない、そして両チームともにミスが出てしまう。そしてフィジカルコンタクトが多くなってしまう、そういうゲーム展開になってしまう。そこで小松と中後を入れて、フィジカル的な強さを出していかなければ、というところで交代を決断しました」

Q 次のステージに向けて意気込みは?
A 「ひと言で言うなら、今日ガンバと戦った同じ気持ちで臨むということです。その気持ちのことを私はよく『がんばれスピリッツ』というふうに話すのですが、今日見せてくれた選手の『頑張れスピリッツ』を発揮していけば、セレッソというのはさらに前に進める、そして歴史を変えていけると思います」

選手コメント

・高橋大輔
「(ゴールシーンについて)流れがなかなかすっきりしなくて、シュートで終われてなかった時間帯で、GKもクロス対応だったし、打ってもいいかなと思ってやりました。(入ると思いましたか?)狙っただけです。(後半、布陣が変わって)ボギョンが前に出てきて攻撃の形を作ってくれた。ボギョンから一本きたところで打ちました。前半はうちのペースから相手ペースに流れた試合で、満足してなかった。もう少し落ち着かせてボールを保持したかった。(ダービーでなかなか勝ててない中で)舞台が整ったという感じがありました。負ける可能性もある中で、セレッソとガンバの歴史を振り返って、今日歴史を変えられるいい舞台だと思っていました。選手にとってプレッシャーだったけど、それを力に変えられた。(プレッシャーは)選手、クラブみんなが力に変えられた要因。(今日の試合の立役者になったのでは)運もあって、たまたま僕が取っただけです。誰が取っても、チームの目標は一緒だったんで。(これまでの自身のパフォーマンスがよくなかった中で)ACLでもJリーグでも毎試合格闘しながら、そういう面を改善しながらやってきました。ご褒美になったというか、いいきっかけになります。今日の全てに関してもよかった訳じゃないけど、でも取り組んできたことを少しは改善されたと思います。こういう舞台で気持ちを保てたことは次につながると思います。すぐにJリーグがあるので同じ感じでやりたいです」
・藤本康太
「今日の対策は、個人としては頭の中で何度もシュミレーションしていました。
アドリアーノは前を向くと危ないので、間合いというか、距離をつめることを意識しました。最後はそこがつかみ切れずにピンチになりましたけど、それ以外は抑えることができました。これはすごく自信になります。ただ試合はそれだけじゃなくて、ゼロで乗り切れば必ず(点を)獲ってくれると信じて、苦しいところもみんなで耐えられた。それが勝因だと思います。(リーグ戦勝てていない中、今日はなにか違いは?)いつも通りでした。ただ、ラウンド16で一発勝負だし、ダービーなのでかなり気合は入っていました。
(藤本選手はセレッソの中では長いが、どんな気持ち?)そうですね、今はシャケさんが一番古いんですけど、僕もガンバ戦では苦い経験をしてきた。その中で勝ったのはとてもうれしいですね」