「敵は自らにあり」。「一戦必勝」の精神を貫きたい

「データは語る」のコーナーでも紹介したとおり、昨年の川崎フロンターレ戦は、リーグ戦では“ダブル”を達成し、カップ戦でも2引き分けで準決勝進出とセレッソの4戦無敗だった。 その原動力になったのは、2021シーズンのJ1第36節、ホームで1－4で敗れた試合にある。試合後、小菊昭雄監督は「試合の流れを読む力、決定力、プレッシャーの中でもボールを失わない技術、グループとしての連動、その差は大きく、1枚も2枚も相手が上だった。今日の対戦を必ず生かし、今日の敗戦があって成長できたと言えるように、チームとして取り組んでいきたい」と語っている。 その一戦を踏まえ、昨年は「川崎Fに勝つ」ことがチームの成長につながるとし、果敢に挑んで“リーグダブル”を達成。着実にチームが前進していることを示した。前節、名古屋グランパスに3－1と快勝した後、次節の相手、川崎Fが8月のリーグ戦では勝利がないことを問われた小菊監督が、「川崎Fは川崎F。間違いなく強いチーム」とキッパリ語った背景には、こうした一連の経緯がある。 一瞬でも隙を見せれば付け込まれるだけの攻撃力をもった相手であることを、誰より指揮官自身が理解している。今節も「大一番」と位置づけた前節と同様のテンション、球際、一つひとつに懸けるプレーで相手に襲いかかるのみ。「敵は自らにあり」。川崎Fがリーグ戦5試合未勝利という事実から抱きがちな油断・慢心を取り払い、「一戦必勝」の精神を貫くことが重要だ。 （文＝小田尚史）

日本代表初招集を受けた、攻撃的サイドバック

V・ファーレン長崎から加入2年目、超攻撃的な右のサイドバックだ。加入1年目の昨シーズンは、1列前の右サイドハーフとしても活躍。攻守にわたるアグレッシブなプレーでチームを支えた。 2年目の今シーズンは再び右サイドバックにポジションを移し、開幕スタメンを飾ると、途中4－3－3の右ウイングでプレーする時期もあったが、現在は右サイドバックに定着。巧みな位置取りと果敢な進入で右サイドの攻撃を活性化。ジョルディ クルークスとの縦関係は試合を重ねるごとに機能し、チームの大きな武器となっている。 そんな成長著しい25歳に8月31日、吉報が届く。9月上旬の欧州遠征、ドイツ代表とトルコ代表との試合が組まれているSAMURAI BLUE（日本代表）のメンバーに初選出されたのだ。「自分のストロングポイントは攻撃。中に入ったり、外に出たり、（他の選手とは）また違った強みがあると思うので、そこで勝負したい」と胸を躍らせる。 代表ウィーク前、最後のリーグ戦となる今節は、3連勝が懸かった川崎フロンターレ戦。「代表に選出していただいて、そういった目で見ていただくこともあると思うので、そこは自覚して責任をもったプレーを心掛けたい。それがチームにとってもプラスになるように」と、あくまで自然体ながら、代表選手としての自覚も芽生えている。チームを勝利に導き、日本代表の活動へと向かいたい。 （文＝小田尚史）

守備からリズムをつかみ、リーグ3連勝へ

「絶対に勝たなければいけない試合」（香川真司）と位置づけた前節、名古屋グランパスとの一戦は攻守に高い集中力を発揮し3－1の快勝。当初からの目標「3位以内」を射程圏内に捉えた。このままの勢いを維持し、ラスト9試合を駆け抜けていきたい。 その名古屋戦は1週間前の8月26日に開催された。開始早々、名古屋にネットを揺らされるがVARによってノーゴール判定になると、9分にセレッソが先制。抜け出したレオ セアラのクロスを上門知樹が合わせた。しかし、直後にクロスから失点。1－1のまま突入した後半も、互いに譲らずチャンスを作っていく。60分過ぎには名古屋に2度の決定機を許すが、いずれもヤン ハンビンの好守でしのぐ。すると71分に歓喜の瞬間が到来。上門が巧みなトラップでDFを外し、ドリブルからのシュートを突き刺した。88分には途中出場の北野颯太にもゴールが生まれ、名古屋を突き放したセレッソ。今シーズンのベストと言える内容で大きな1勝をつかみ取った。 歓喜の余韻が残る中、今節は川崎フロンターレを迎え撃つ。9勝6分10敗の9位。直近5試合で2分3敗と調子を落としている川崎Fだが、もちろん侮ることはできない。今夏には元フランス代表のFWバフェティンビ ゴミスを獲得するなど陣容を整え直した。宮代大聖や山田新など若手も結果を残し、チームに新風を吹き込んでいる。ポゼッションでは相手に一日の長があるだけに、まずは守備からリズムをつかみたい。競り合いや球際で相手を上回りつつ、連動したプレッシングから主導権を握れれば勝機は広がっていくだろう。 名古屋戦の勝利後、小菊昭雄監督は「一戦必勝で戦っていくことには変わりはない」と言葉に力を込めた。いい準備をして、ピッチで全力を尽くす。今日のゲームも“小菊セレッソ”らしく攻守にアグレッシブに戦い抜く。

DATA① 通算対戦成績 J1での対戦成績はセレッソの10勝7分12敗（48得点・55失点）とやや負け越しているが、直近は3試合無敗（2勝1分）と相性は良い。昨シーズンはリーグで“ダブル”を達成し、今シーズン最初の対戦となったアウェイでの一戦も、0－0に終わったが、勝利してもおかしくない展開に持ち込んだ。今節も十分、自信をもって臨めるだろう。 DATA② 攻撃面のスタッツが高い川崎F 現在リーグ戦では5試合未勝利で順位は9位、総得点数「34」はリーグ7位と、近年に比べ、やや不本意なシーズンを送っている川崎F。ただし、平均のボール保持率は1位（56.4％）、パス本数は2位（14544本）、シュート数は4位（264本）と、依然として攻撃面でのスタッツの数値は高く、チームの色は徹底されている。そうしたハッキリしたスタイルをもつ相手に対し、セレッソは守備から主導権を握る試合になることが想定される。 ただし、守備の仕方としては、引くのではなく、「下がらず積極的に、ボールの出どころにいく。前からボールを奪いにいく。それを貫いて勝利したい」と小菊監督も話すように、あくまでアグレッシブに川崎Fのパスワークを寸断したい。中でも、現在7得点・4アシストと川崎Fの攻撃の中心にいる背番号14・脇阪泰斗を抑えることが、勝利につながっていくだろう。 DATA③ 昨シーズンは公式戦4戦無敗 前述したように、昨シーズンは川崎F相手にJ1では“シーズンダブル”を達成。準々決勝でぶつかったルヴァンカップでも、ホームで1－1、アウェイで2－2と“対川崎F”は4戦無敗だった。改めて勝因を振り返ると、前から奪いにいく連動したアグレッシブな守備と、我慢して相手の攻撃をしのぐ時間帯のメリハリが利いていたこと。攻撃では、前がかる川崎Fに対し、鋭いカウンターが効果的に決まったことが大きい。高い位置を取る川崎Fの両サイドバックの裏を狙ってクロスから得点を重ねるシーンや、セットプレーも有効活用できていた。また、昨シーズンは4試合中3試合で89分以降に得点し、試合を動かすなど、粘り強く戦えたことも負けなかった大きな要因となっている。 （文＝小田尚史） データ提供：©ＪＳＴＡＴＳ