皇后杯 JFA 第47回全日本女子サッカー選手権大会第3回戦

2025.11.22

セレッソ大阪ヤンマーレディース

百濃 実結香 (78')

1

OTHER

FULL TIME

0

0-0

1-0

ノジマステラ神奈川相模原

兵庫県立三木総合防災公園陸上競技場

ギャラリー

MATCH REVIEW

今シーズン3度目の対戦となったノジマステラ神奈川相模原との皇后杯3回戦。集中した守備と百濃実結香の決勝点でベスト8進出を果たす


延長戦の末、オルカ鴨川FCを3-1で下した皇后杯2回戦から中6日。セレッソ大阪ヤンマーレディースは、ノジマステラ神奈川相模原との皇后杯3回戦に臨んだ。先発はオルカ戦から5人変更。前線は浅山茉緩と百濃実結香が縦関係を組み、右サイドバックには吉田琉衣が入り、今シーズン公式戦初出場を果たした。

 

今シーズン3度目の対戦となったN相模原との一戦。リーグ戦の第3節で対戦した時は互いに3バック、カップ戦の第1節は互いに4-4-2、どちらもミラーゲームとなったが、今回のN相模原は4-1-4-1の布陣。大竹麻友の1トップに根府桃子と祐村ひかるの2シャドー、笹井一愛と川島はるながサイドに張り出す形で変化を付けてきた。序盤はそのN相模原がボールを握り、サイドへ展開、クロスからゴールに迫ってきたが、セレッソの守備陣も慌てず対応。良い形でシュートは打たせない。試合前から「背後へのスピード、高さを生かした」(松田岳夫監督)相手の攻撃を警戒していた中で、クロスやロングボールをはね返した後のセカンドボールも含め、全員が集中した守備を見せた。もっとも、攻撃に関しては、前半は思うようにチャンスを作れない。23分、後方から追い越して左サイドの背後を取った脇阪麗奈がシュートを放ったシーンは決定機に近かったが、相手GKの好セーブに阻まれた。その後も足元でつなぎながら浅山や百濃が背後を狙うなど、狙いを持った攻撃もいくつか見られたが、「アタッキングサードでの崩し方は、迫力もアイディアも不足していた。特に前半はシュートも少なく、ゴールに近づくシーンがほとんどなかった」と松田監督も振り返ったように、前半はゴールの匂いに乏しい内容で終わった。

 

後半も立ち上がりはN相模原のペースで進む。前への圧力を強め、サイドを起点にゴールへ向かってきた相手に対し、56分、クロスから背後を取った笹井に決定機を作られたが、シュートはGK名和咲香がビッグセーブ。1分後、再びクロスから根府のヘディングでゴールを脅かされたが、ここはシュートがクロスバーを越えて事なきを得た。セレッソとしては、この2つのシーンがこの試合最大のピンチであり、この時間帯をしのいだことが、その後の展開につながった。前半の終盤から百濃と和田麻希がポジションを入れ替え、和田が2トップの一角、百濃が右のサイドハーフに入っていたセレッソは、後半も同様の並びでスタートした中、57分、北原朱夏に代わって高和芹夏がイン。高和がトップ下に入り、和田が再び右サイドに移り、百濃が左サイドへ回った。すると65分、右サイドから和田のパスを受けた高和がシュート。66分にも、前向きな状態でボールを持った宝田沙織が右サイドへ展開すると、後半開始から投入されていた中西ふうが和田とのワンツーからいい形でフィニッシュへ持ち込む。徐々に攻撃に流れが生まれてくると、73分、和田に代わって、怪我から復帰の新井萌禾が約2ヶ月ぶりにピッチに入った。今度は新井がトップ下、高和が右サイドに出る。田子不在の前線で、指揮官が手を変え、品を変え相手を崩すべくチャレンジを続けると、78分、ついにゴールをこじ開けることに成功。中盤で相手のパスをインターセプトした宝田が前方のスペースへ好フィードを送ると、背後に抜け出した百濃が相手DFのタックルを巧みにかわし、切り返してシュート。右足で放ったフィニッシュが相手GKの手をはじき、ゴールに吸い込まれた。歓喜に沸くセレッソは、先制から3分後にも好機。高和、新井とつなぎ、最後は脇阪がシュート。良い形で崩したが、わずかにクロスバーを越えた。82分にも、前線で溜めを作った新井のパスを受けた百濃がCKを獲得するなど貪欲に追加点を奪いにいく。終了間際は立て続けに相手のセットプレーやクロスを受ける展開になったが、ゴール前で何とかかき出して、決定的なシュートは許さない。90分には浅山に代えて米田博美を投入。後ろを固めて試合を締めると、このままタイムアップ。カップ戦特有の硬さも見られたゲームだったが、最後まで守備で崩れることなく、時間の経過とともに攻撃にも流れが生まれ、ワンチャンスを生かして見事、準々決勝進出を果たした。

 

試合前、「守備は失点ゼロにこだわって、攻撃では決めるとこをしっかり決めて、勝ちたい」と話していたのは白垣うのだが、まさに粘り強い守備とチャンスを逃さない決定力を発揮して勝ち上がったセレッソ。次なる戦い、ベスト8の相手は、今シーズンのなでしこリーグ1部で優勝した朝日インテック・ラブリッジ名古屋。3回戦ではAC長野パルセイロ・レディースを2-0で下した実力は本物。セレッソとしても、最大限の警戒をして臨み、準決勝進出を果たしたい。

監督コメント

■松田岳夫監督
Q:厳しい試合でしたが、1-0で勝ち切りました。試合を振り返ると?
「厳しいゲームになることは分かっていたし、1点勝負というところでは、まず失点しないこと。それから、先制点を奪うこと。守備は結構、機能していたと思いますが、攻撃のところでは、アタッキングサードでの崩し方は、迫力もアイディアも不足していました。特に前半はシュートも少なく、ゴールに近づくシーンがほとんどなかった。そこでの課題は感じました。普段は田子がゴリゴリ、一人、二人と引きずってでもゴールに向かうところで、今日はいなかった。その代わりが誰、ということではなくて、だったら違うタイプの選手が自分の力を発揮することが大事な試合でしたが、そこに関しては、まだ課題も残りました」
 
Q:相手のクロスやロングボールに対して、守備では集中してはね返せた感じでしょうか?
「そうですね。裏のボールへの対応と、はね返すだけではなくて、今日はセカンドボールの意識が高かった。前回対戦で、セカンドボールからシュートを打たれてピンチもあったので、それがいい教訓になったと思います。ただし、トーナメントなので勝つことが大事ですが、その中でも自分たちの良さを出していく、という部分では、課題も残りました。ロングボールやクロス、シンプルにゴールを目指してくる相手に対して、我々も同じような状況に引っ張り込まれた。そうなってはいけない。同じサッカーをしたら、普段からやっている相手の方が強い。そこは自分たちのサッカーを取り戻すべき。指示したことは、『リズムが悪い時はボールをつなげ、スピードを落とせ、いつもやっていることをやっていけ』と。そこで少しリズムを取り戻せたことは大きかったと思います」
 
Q:田子選手が不在の中、どう攻撃の形を作るかという部分では、今日は前線の選手たちのポジションを頻繁に変えたり、今日のメンバーの中での最適解を常に探っていた印象です
「そうですね(笑)。時間帯によって色んな考えはありましたが、スペースでボールを受けることができる(浅山)茉緩に対して、そこに連動できる選手。大事なことは、ボールを受けて時間を作ること、味方が上がる時間を作ること。それは今日のテーマでした。スタートのところでは、ドリブルで時間を作れる選手。途中からは、比較的ボールキープが得意な(和田)麻希。(後半途中から入れた)高和に関しては、プレッシャーもかけられるし、ガツガツいける。色んなタイプを使い分けてはいたのですが、求めたことは、基本的には変わりません。FWとトップ下で連係できるように、2人で機能できるように。攻撃のところでバイタルエリアを色んな選手が工夫して使うことは今日のテーマでした。バイタルエリアはサイドの選手も使えるし、ボランチも使えるし、FWも落ちて使える。全員が使える。そこに誰がどう関わるか。それはチームで大切にしようという話はしていました。そのかわり、みんながそこに入ったらバランスは崩れる。当然、バランスも考えながら、バイタルエリアを使うことは意識させました」
 
Q:そうしたプレーを百濃選手が体現した感じでしょうか?
「そうですね。スタートは前で使って、その後、右になって、左になって。グラウンド全面をうまく使ってくれた。彼女なりに、いいところに顔を出しながらプレーしてくれたと思います」
 
Q:今日は相手の入りが4-1-4-1で、立ち上がりから圧もかけてきた印象ですが、そこはうまくしのげた感じでしょうか?
「4-4-2もしくは4-2-3-1を想定していましたが、ゲームが始まると、4番がアンカーで、2シャドーのような形でした。そのアンカーの脇をどう使うかは選手にも伝えましたが、前半はうまく活用できませんでした。ただ、選手たちも時間とともにグラウンドの中で工夫は見られました。サイドだけではなく、真ん中に進入することはハーフタイムでも意識させました」
 
Q:宝田選手は、やはり今のポジションが最適でしょうか?
「試合の流れにもよりますが、チームの中心、ヘソの部分に彼女がいると、特に攻撃で落ち着きができます。あそこで時間を作れることは、チームにとってはすごくプラス。前に行けば行ったで彼女の良さも出るのですが、彼女が前に行くと、どうしても真ん中が手薄になってしまう。ある程度、そこは彼女も理解もしてくれながら、ゲームの中で考えてポジションを取ってくれていると思います」
 
Q:復帰戦となった新井選手について
「限られた時間の中で、万が一、延長になっても継続して使えるぐらいの時間まで我慢しました。彼女の良さは、見ての通り、本能でプレーするところ。こっちも計算できないところはありますが、今日のところは当たりだったかなと思います(笑)」

選手コメント

■百濃実結香選手
Q:決勝点になったゴールの場面について、ボールを受ける前のシーンから振り返ると?
「(自身の)運動量が落ちていた時間だったので、守備で戻れてはいなかったのですが(苦笑)、守備で頑張るよりは、背後を狙おうと思って、前めに残ってはいました。ボールを取った瞬間、(宝田)沙織さんは絶対に見てくれると思ったので、信じて裏に抜けました。最初はワンタッチで打とうと思ったのですが、自分の歩幅が合わなかったのと、間接視野で大賀選手が滑ってきそうなのが見えたので、無理やり打って外したくないと思って、切り返しました。いつもは慌ててしまうのですが、今日は不思議と落ち着いて切り返せて、打ち切れて、それが点になったので、ホッとしました(笑)」
 
Q:背後への抜け出しもそうですが、あの切り返しが見事でしたね
「自分でも意外でした(笑)」
 
Q:宝田選手がボランチにいる良さをどう感じていますか?
「とにかく(周りが)見えている選手なので、こっちが動き出したいタイミングで動けばボールが出でくる安心感があります。欲しいタイミングで動き出せばパスを出してくれるので、有難い存在、大きな存在です」
 
Q:今日は色んなポジションでプレーしました。常に考えながらプレーしていたと思うが?
「攻撃では、トップ下というポジションにこだわらず、試合前に言っていたように、人の流れを作ろうと思ってプレーしました。ただ、うまく相手を動かせず、そんなに人の流れは作れなかったのですが、部分、部分で外せたところはあったので、そこからの自分のクロスの質は課題でした。サイドでも中でも関わり続けることは変わらないので、やりにくさはなかったです」
 
Q:特に前半は相手のゴール前に入っていくことに苦しんだ印象ですが、後半は時間とともに、複数の選手が関わっていく場面も出せていたが?
「前半はボールを持ってもなかなか崩せず、ハーフタイムに『もう一工夫が必要』という話はしていました。今日は色んな組み合わせでやりましたが、選手によって色んな特長があるので、声を掛け合ってコミュニケーションを取って、崩そうと試みていました。もっと落ち着いてできれば良かったですが、全くできていなかったわけではないので、練習から高めていきたいです」
 
 
■宝田沙織選手
Q:カップ戦っぽいと言いますか、硬いゲームになった印象ですが、1試合を通して守備では安定して戦えたと思うが?
「試合前の分析のところから、相手は蹴ってくることは分かっていましたが、1発は怖かったので、そこだけはみんなで注意しようと共通意識を持って入りました。そこは90分を通してできたと思います」
 
Q:CBを中心にDFラインでもはね返していましたが、宝田選手のセカンドボールを回収する意識がとても高かったと思うが?
「そうですね。セカンドボールは今日、特に意識していました。(脇阪)麗奈とも拾うことは話していました」
 
Q:攻撃に関しては、前半はチャンスを作り切れなかった部分もありましたが、後半にかけてチーム内で修正しようとしたことは?
「ハーフタイムでは、もっと相手のアンカー脇を使っていこうと。誰が使ってもいいし、ボランチが上がって、そのスペースをうまく使うことはチームとしても意識してやろう、という話はして後半に臨みました。後半は相手も引いてきたので、スペースも空いていた。うまく使えるシーンもありましたが、相手に合わせて蹴ってしまうところもあったので、つなぐところはもっとつなげたら良かったと思います。やっぱり、お互い蹴ってしまうと(試合が)忙しくなる。落ち着かせる場面も必要だったので、そこは自分でも意識してプレーしました」
 
Q:得点シーンは素晴らしいフィードでした。あの位置から中長距離のパスを出せることが宝田選手の良さだと改めて感じたが、あの場面を振り返ると?
「ボールを持って前を見たら、(百濃)実結香が走っていたので。スピードもある選手なので、GKに届かないように蹴ろうと思ったら、結構、いいボールがいきました(笑)」
 
Q:準々決勝に向けての意気込みもお願いします
「やっぱり90分で試合を決める難しさもあるのが皇后杯だと思います。自分たちがやりたいサッカーも出しつつ、今日みたいに勝ち切ることを意識しながら次も臨みたいと思います」
 
 
■白垣うの選手
Q:試合前から「クロス対応。ロングボール対応が大事になる」と話していましたが、そこは1試合を通してやり通せた感じでしょうか?
「個人的には何回か裏をやられた部分もありましたが、みんなでカバーしてくれました。1本でシュートまで行かれたシーンはなかったので、それは良かったです」
 
Q:相手は1トップの下に2人のシャドーがいて、少し捕まえ辛さもあったように感じたが?
「蹴ってくると分かっているからこそ、ちょっとラインが低くなりがちで、そこ(中盤)のスペースを空けてしまった部分はあったと思います」
 
Q:点を取るために攻撃で意識していたことは?
「相手は蹴ってくるからこそ、こっちはつないでゴールに向かうことが大切だと思ったので、そこは意識しました。相手のぺースに持っていかれる時間帯もありましたが、つなぐことは意識しました」
 
Q:なでしこジャパンでの活動に向けて、一言お願いします!
「自分の良さをしっかり出して、恐れず、引かず、思い切り頑張りたいと思います!」
 
 
■高和芹夏選手
Q:後半の途中からトップ下でプレーしましたが、入る時に心掛けていたことは?
「元々、トップ下のポジションはやっていましたし、自分の感覚としてもやりやすいポジションなので、自信を持って入りました。0-0の状況で得点が欲しかったので、前で起点を作ること、シュートに持っていくことを意識して入りました。守備ではファーストディフェンスとして、プレスのスイッチを入れることも言われて入りました」
 
Q:高和選手が入って以降の時間帯で攻撃に流れが生まれた印象です。高和選手自身、生き生きプレーしていたように映ったが、久しぶりのトップ下で楽しさもありましたか?
「めっちゃ楽しかったです(笑)。味方、人の流れを作ることは監督からも言われていたので、そこは意識しました。自由に動けるポジションですし、背後に飛び出すこと、起点を作ること、あとは自分の持ち味である球際で戦うことは出せたと思います」
 
Q:今日は田子選手が不在の中、前線は色んな組み合わせがありましたが、高和選手のトップ下も、今後のオプションになると感じたが?
「どこで出場したとしても、チームのためにできること、自分がスイッチを入れたり、できることはあると思うので、11人の中に入っていけるように頑張ります!」
 
 
■新井萌禾選手
Q:復帰戦になりました。どのような思いでピッチに入りましたか?
「とにかく走り回ろうと(笑)。あとは、絶対に点を決めるんだ、という気持ちが強かったです」
 
Q:試合前、監督は、「時間制限もあるから、どのタイミングで起用するか難しさもある」という話もされていましたが、出場するタイミングとして、試合前にイメージしていたことはありますか?
「正直、試合に出られるか分からなかったですが、ベンチにいる時から出る準備はしておこうと思いました」
 
Q:0-0の終盤で起用されたので、「90分で勝ち切ってこい」という監督のメッセージも感じたが?
「守備は前から強く行って、あとは自分でドリブルしたり、『ゴールに向かう姿勢がチームに足りていないから、それを出してこい』と言われて入りました」
 
Q:入って5分後に得点が生まれたが、久々にピッチの中で感じた得点の瞬間の思いは?
「この2ヶ月間、スタンドで見ていたので…。怪我する前は1勝しかしていなくて、喜ぶことが少なかったので、久しぶりにピッチの上でみんなと喜べて嬉しかったというか、『あ、帰ってきたんだな』と、そこで実感できました」
 
Q:一つ段階を踏めたと思うが、今後に向けて
「試合勘とかも少しずつ取り戻して、もっと自分の武器を出していかなといけない。どんどん積極的にプレーしていきたいと思います」
 
Q:復帰を待っていたサポーターの皆さんにも一言お願いします
「怪我している期間もずっと背中を押してもらって、復帰したいという気持ち、そういう強い気持ちになれたのは、周りの人のおかげ、サポーターの皆さんのおかげです。これからもっと自分を出して、チームの勝利に貢献できる選手になっていきたいので、応援よろしくお願いします!」