2025/26 WEリーグ クラシエカップ第1節

2025.10.26

セレッソ大阪ヤンマーレディース

田子 夏海 (61')

田子 夏海 (66')

2

HOME

FULL TIME

1

0-0

2-1

ノジマステラ神奈川相模原

築地 育 (81')

ヨドコウ桜スタジアム

1,267

大阪学芸サポーティングマッチ

ギャラリー

MATCH REVIEW

後半から出場した田子夏海が2得点の活躍。終盤、1点差に迫られるも守備で体を張り、WEリーグ クラシエカップ初戦を白星でスタート
 
いよいよ開幕した2025/26 WEリーグ クラシエカップ。グループステージではグループCに入ったセレッソ大阪ヤンマーレディースは、ホームにノジマステラ神奈川相模原を迎えての初戦となった。先発は直近のリーグ戦、三菱重工浦和レッズレディースから4人変更。GKに山下莉奈、左サイドバックに北原朱夏、ボランチに宮本光梨、右サイドハーフには高和芹夏がそれぞれ入ると、公式戦4試合ぶりに宝田沙織が2トップの一角でスタートした。
 
立ち上がり、ボールを軽快につないで攻めるセレッソは、5分、中盤でボールを拾った百濃実結香がドリブルからクロス。相手DFに当たってこぼれたところを宝田が押し込む。先制かと思われたが、シュートはわずかに枠を外れた。このままセレッソが主導権を握るかに思われたが、ここから試合はN相模原のペースで進む。6分、相手CBのロングボールをDFラインではね返せず、こぼれ球を拾われミドルシュートを受ける。遠めからではあったが、強烈な弾道が飛んできたが、GK山下が左手に当ててクロスバーを直撃。試合の流れを分けるビッグプレーだった。2トップに対する長いボールも生かしつつ、サイドからのクロスというシンプルだが力強い攻撃を繰り出してくるN相模原に対し、セレッソは守勢に回ると、11分には自陣でのスローインを奪われたところから攻撃を受け、左サイドを突破されて決定的なピンチも招いたが、最後のシュートがポストに当たり、事なきを得る。この時間帯はパスも引っかかるシーンが増えていたが、15分、北原のパスから背後を取った百濃がチャンスを作る。ここで得たCKでは、脇阪麗奈のキックに中谷莉奈がヘディングで合わせたが、クロスバーを越えた。31分には、引いて受けた和田麻希が起点となり、高和のパスに抜け出した宝田がシュート。決定機に近い場面も作り出した。ただし、前半のセレッソは、「守備のところでファーストディフェンダーが決まらず、後手、後手に回った」(脇阪)結果、N相模原に展開されてサイドを使われる場面も目立った。なでしこジャパンに選出された白垣うのが不在の今節、CBでプレーした中谷も、「もっと思い切って競りにいかないといけなかったところで、前に強く行けなかった。そういう部分で相手にスペースを与えてしまったことは課題」と振り返るなど、守備でコンパクトな状態を作り切れず、全体が間延びした。ファウルも増えて、何度も相手にFKを与えたが、そうした状況でも無失点で前半を終えたことが、今節、勝利を掴めた大きな要因になった。
 
前半は攻撃でもボールを前に運ぶことに苦労。シュートまで持ち込むシーンが少なかった。そうした中で、松田岳夫監督はハーフタイムに3枚替えを行う。高和、宮本、北原に代えて田中智子、田子夏海、米田博美を投入。田子が和田と2トップ、宝田がボランチに下がり、米田がCBに入り、中谷が左SBに移った。ただし、後半も立ち上がりはN相模原の勢いに押されて守勢に回ると、松田監督は57分という早い時間帯に4人目の選手交代を決断。和田に代えて浅山茉緩を投入。「背後のスペースに飛び出せる選手を入れることで相手の守備組織を間延びさせる」(松田監督)意図を与えた。この交代が功を奏したか、ここからセレッソが攻勢に出る回数が増えていくと、58分、宝田のパスを受けた田子がDFを背負った状態から反転してシュート。60分にも、浅山のポストプレーを受けた脇阪のスルーパスに抜け出した田子がドリブルで運んでクロス。攻撃に勢いが出てくると、ここで得たCKから先制に成功。GKの前でブロックしていた田子にピンポイントで脇阪のキックが入ると、田子が収めて右足を振り抜き、ネットを揺らした。この得点でさらに全員の動きが活性化。直後のキックオフでは、相手のバックパスをカットした浅山が持ち込みシュート。一気に畳み掛けると、先制から5分後に追加点。脇阪を起点に宝田がペナルティーエリア内に進入。折り返しのパスを田中が狙うと、ここはミートしなかったが、さらに奥にいた田子が今度は左足で振り抜き、ネットを揺らした。ここ数試合、凄みが増していたストライカーの2発で一気にセレッソが優位に立つと、75分にも決定機。脇阪のスルーパスから背後を取った田中のクロスにファーで浅山が合わせたが、枠を外してしまう。76分には、FKのセカンドボールを拾った米田の落としを受けた宝田が、ダイレクトでコースを狙ったシュートを放ったが、GKのファインセーブに遭う。試合を決定付ける3点目を逃すと、81分に1点を返されてしまう。それでも、後半アディショナルタイムには全員で体を張った守備を見せたセレッソが1点差を守り切って2-1で勝利。クラシエカップの初戦を見事、勝利で飾った。
 
押し込まれた前半から一転、後半にかけて采配で試合を動かした松田監督は、「泥臭いゲームでしたが、一つのボールに対して全員が絡む、何とかしようというところは表現できたかなと感じています。もっともっとやれることを増やし、自分たちの思い通りのゲームをする。今後はそういうところを求めていきたい」と総括。課題も多く見られた一戦とはなったが、“ここぞ”で畳み掛けた迫力は見事であり、2得点の田子はストライカーとしての能力を見せ付けた。次戦はリーグ後半戦の初戦となる日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦。アウェイでの一戦にはなるが、3強の一角から勝利をもぎ取りたい。

監督コメント

■松田岳夫監督
「雨の中、最後まで応援していただいたファン・サポーターの皆さまに感謝したいと思います。リーグ戦も含め、ホームの勝率は非常に高い。皆さんの後押しのおかげで、選手たちの力を発揮しやすい状況を作ってもらっています。それは心から感謝したいと思います。ゲームの方は、前半は、積極的にと思いながらも、それぞれの選手がリスクを恐れ、安全なプレーに徹してしまった。相手の背後に進入することもできず、相手の中央に入ることも困難な状況でした。その中で、相手の長いボールに対して、その瞬間だけ守備が間延びしてしまう。セカンドボールを拾われて、あわやというピンチも招いてしまった。前半はなかなかリズムを作ることができませんでした。後半は、相手をはがせる選手(を投入して)、『ボールを持って、一人一人がやれることを増やそう』と強調して入りました。泥臭いゲームでしたが、一つのボールに対して全員が絡む、何とかしようというところは表現できたかなと感じています。もっともっとやれることを増やし、自分たちの思い通りのゲームをする。今後はそういうところを求めていきたいですし、今日のゲームに満足せず、次はリーグ戦になりますが、次の試合に向けて続けていきたいです」
 
Q:前半は相手の2トップに対しての長いボール、クロスに押し込まれる状況も続きましたが、内容を好転させることができなかったのは、技術的な問題だったのか、メンタル的な問題だったのか
「両方あると思います。守備のところでは、“コンパクト”の質を高めることが今の我々のチームの課題ですが、ボールに対してファーストディフェンダーが決まらない、中盤の選手たちが間延びしてしまう、その結果、最終ラインの選手が相手FWの起点を潰せない、それが要所、要所で起きていたことで、前半のような内容になったと思います。どこから頭を決めて、相手にプレッシャーをかけていくのか。どうやって相手をサイドに追い込んでいくのか。そのあたりの質は、ゲームの中で培っていくしかないのかなと。トレーニングで積み上げても本番のゲームになると、そのあたりを表現することがまだできていない状況です。そういったことで、リズムが崩れてしまったのだと思います」
 
Q:後半開始から3選手を代えて、後半の早い時間帯、57分に4人目の選手交代も行いました。特に4人目の交代から流れを引き戻した印象も受けたが、交代の意図や狙いは?
「前半は相手のディフェンスラインを裏返すことができませんでした。ボールも人も、そこに入れなかった。やはり、まずその狙い(裏)がないと、中央も取れないですし、前向きでいい体勢も作れません。後半から出た選手には、『リスクを冒してでも、相手の背後に進入するプレーを試みよう』と伝えました。ただ、ターゲットが一つだったので、後半の途中から、背後のスペースに飛び出せる選手を入れることによって、相手の守備組織を少し間延びさせることができたのかなと考えています」

選手コメント

■田子夏海選手
Q:チームを救う2得点でした。後半からの出場でしたが、どのような気持ちで入りましたか?
「監督からも『後半から3人を代える』という話があったので、自分が出たら点を決めようと思って入りました」
 
Q:CKから決めた1点目について
「GKの前にいて、ブロックしていたところにボールが入ってきたので、思い切って蹴りました(笑)」
 
Q:チームの動きも一気に良くなったが、2点目はその5分後でした。2点目を振り返ると?
「(自身がシュートを打つ前に)トモさん(田中智子)が打ったので、自分のところに来るとは思っていなかったですが、反応できたので、入って良かったです」
 
Q:体を張って収めて推進力も出していたが、ゴール以外のプレーについては?
「前を向いてプレーできました。ゴールに向かって入っていく回数も多く作れたと思います」
 
Q:今週の前半は、U-19日本女子代表候補の国内トレーニングキャンプの活動もありましたが、今日の試合を迎えるにあたり、どのような影響がありましたか?
「自分の足りないところや、周りの選手のプレーを見て学べることが多かったので、代表でやったスピード感のまま今日の試合にも挑めたと思います」
 
Q:来週はリーグ戦でのベレーザ戦です。抱負をお願いします
「自分が点を決めて勝てるように頑張ります!」
 
 
■脇阪麗奈選手
Q:苦しいゲームでしたが、勝ち切った思いは?
「カップ戦の初戦だったので、勝ち切れたことはチームにとって良かったと思います」
 
Q:前半はリズムを作れず、相手の勢いもあり、立て直すのが難しい展開になっていました。前半の流れはどう感じていましたか?
「前半は相手がシンプルにロングボールを蹴ってきて、収められる形が多く、守備のところでファーストディフェンダーが決まらない状況だったので、後手、後手になったのですが、失点しなかったことが大きかったと思います」
 
Q:後半に盛り返せた要因はどう考えますか?
「前節と同様、前半が終わった時点で3選手を代えてリズムが変わったのと、前になっちゃん(田子)、まひ(浅山)とフレッシュで動ける選手が入ってくれたことで、相手の疲労も見られるようになり、こっちが優位に立てたかなと思います」
 
Q:先制点は脇阪選手のCKから生まれました。それまでなかなか決定機が作れなかった分、大きな1点になりましたね
「はい。練習している形でした。最近は狙ったところにボールを蹴れているので、中で決めてくれて良かったです」
 
Q:崩した2点目も脇阪選手が起点となったが?
「(宝田)沙織といいコンビネーションで崩せて、ゴールに関われたのは個人としても良かったと思います」
 
Q:直近のリーグ戦では前半での交代でした。これまであまり見たことがなかったですが、今節に向けて1週間、どう自分を見つめ直して臨めましたか?
「人生で初めて前半で交代になりました。これまでのサッカー人生でも、交代させられたことがほとんどなかった中で、あのような交代になり、初めての感情というか、悔しい思いが強かったです。でも、ここで止まったら自分じゃないと思って、1週間、真剣に取り組んで、今日、2点ともに絡めたことは、少し見返せて、とても嬉しいです」
 
 
■宝田沙織選手
Q:今日は久しぶりにFWで先発しました。前半は思ったような展開にはならなかったのかなと思いますが、どのような思いでプレーしていましたか?
「守備で言われていた通りにはなかなかできなくて、どこで取るのかハッキリできなかった場面が多くて、少しモヤモヤしていたのですが、攻撃のところでは、起点になったり、監督からも『落ちて自由にやっていいよ』という感じだったので、そこでは少し起点を作れたのかなと思います。2トップとして、どちらが落ちるのか、どちらが抜けるのか、(和田)麻希とうまく役割は作れたのかなと思います」
 
Q:こういう難しいゲームを勝ち切れたことは大きい?
「そうですね。カップ戦の初戦で、勝ち切りたい思いはすごく強かったので、内容はどうであれ、勝ったことはプラスになったと思います」
 
Q:自身も2点目の作りに関わり、その後は「入ったか」と思われたシュートもあったが?
「自分も角度的に『きた!』と思ったのですが、相手GKの手が伸びてきました(笑)。チームは勝ちましたけど、そこは悔しかったです」
 
 
■中谷莉奈選手
Q:今日はセンターバックでの先発でした。前半は相手に長いボールやクロスを入れられて、対応が難しい場面もあったと思うが?
「自分がもっと思い切って競りにいかないといけなかったところで、前に強く行けなかったり、そういう部分で相手にスペースを与えてしまったことは課題だと感じています。CBは後ろでプレーしている分、もっと声で前の選手に伝えないといけない部分もあったと思います」
 
Q:後半は選手交代もあり、左サイドバックに移りましたが、後半に向けて改善しようと試みたことは?
「もっと自分たちからアクションを起こすことや(ボールを)受けることは、監督からも言われていました。なっちゃん(田子)が入ったことで、前で収められる選手も増えましたし、みんながもっと受ける意識を出せばボールも回ると思って臨みました。そういう部分を前半よりは意識できたと思います」
 
Q:1点差に迫られた後の時間帯については?
「とにかく声を掛け合って、隙を作らないことは意識していました。その中でも、相手に裏に抜けられるシーンもあったので、もっと後ろが安定して、ハッキリプレーすることが大事かなと思いました」
 
 
■山下莉奈選手
Q:前半立ち上がり、ミドルシュートを止めたセーブが試合の行方を決めた部分もあったと思うが?
「相手に蹴られて、ディフェンスが背後を取られて、自分もヤバいと思ったけど、後ろに落ちて、一回、止まって(構えた)。もう少し後ろにポジションを取っていれば、クロスバーの上にはじけたかも知れませんが、クロスバーに救われました」
 
Q:その後もポストに当たる相手のシュートもあって、苦しい時間も続きましたが、ピッチ内ではどう考えてプレーしていましたか?
「先に点を取られると苦しい時間が続くので、失点ゼロで進めないといけないと思って、全員で頑張って守りました(笑)」
 
Q:終盤も1点差に迫られた時間帯で、全員で体を張って守っていましたね
「1発でやられることもそうですが、はじいたボール、セットプレーのセカンドボールをやられることもこれまで多かった。全員、それは分かっていたので、体を張れたのだと思います」
 
Q:ここ数試合、GKは名和選手が守っていましたが、練習も含めて、この間はどう取り組んでいましたか?
「逆にチャレンジできる期間でもありました。いつもやらないこと、というわけではないですが、チャレンジ精神を持ってやれていたと思います。いいライバルとして競争できています」