2023-24 WEリーグ第10節

2024.3.16

日テレ・東京ヴェルディベレーザ

山本 柚月 (61')

1

AWAY

FULL TIME

1

0-1

1-0

セレッソ大阪ヤンマーレディース

田中 智子 (21')

味の素フィールド西が丘

990

HIGHLIGHTSハイライト

ギャラリー

MATCH REVIEW

最後まで力を尽くした好ゲーム。田中智子のWEリーグ初ゴールも生まれ、勝点1を獲得

 

WEリーグ再開後、連敗で勝点を伸ばせずにいるセレッソ大阪ヤンマーレディース。特に前節は、昨季のWEリーグ王者・三菱重工浦和レッズレディース相手に0-4と完敗。そこから1週間、トレーニングの中から心技体を見つめ直し、今節の日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦に臨んだ。先発は前節から2人変更。中西ふうがWEリーグ初先発を果たし、右サイドバックに入った。もう一人、田中智子が3試合ぶりに先発に戻り、矢形海優と2トップを組んだ。

 

立ち上がりから東京NBにボールを持たれる時間が続いたセレッソだが、そこは織り込み済みでもある。チーム全体での連動したプレスに、選手個々でも激しく体を寄せて対応すると、13分にはGK山下莉奈の好セーブもあり、ゴールを割らせない。もっとも、セレッソもただしのぐだけではなく、序盤から積極的にゴールを目指す。6分、脇阪麗奈のクロスに百濃実結香がファーで合わせると、15分にも百濃が前からのプレスでボールを奪い、ビッグチャンス。ここはGKのセーブに阻まれたが、21分、欲しかった先制点を奪う。中西が右から中央へ斜めのパスを入れると、受けた脇阪が相手DFの背後へ絶妙なスルーパス。抜け出した田中がGKの位置を冷静に見て、ダイレクトでニアを抜いてゴールへ流し込んだ。「打つ瞬間はめっちゃ緊張しました(笑)。ファーサイドに蹴ると止められそうな雰囲気を感じたので、ニアに打ちました」とゴールシーンを振り返った背番号8、待望のWEリーグ初ゴールにベンチも沸き返り、笑顔の花が咲いた。

 

先制後は東京NBの攻撃もさらに加速。元チームメートの北村菜々美にサイドを突破されるなどヒヤリとする場面もあったが、26分にはテンポ良くダイレクトでパスをつないでゴールに迫るなど、「意図を持ってボールを引き出して攻める」(鳥居塚伸人監督)という、今節に向けた練習の成果が現れた場面もあった。前からの守備の圧力も落ちず、36分には前線で田中がボールを奪うと、脇阪のパスに最後は矢形が決定機を迎えたが、ここはシュートがわずかに枠を外れた。自陣ゴール前での集中力も素晴らしく、攻守に前節からのリカバリーを示したセレッソが、上々の内容で前半を折り返した。

 

後半は、よりパススピードを速めて縦への圧力を強めてきた東京NBに対し、セレッソは守勢に回る。それでも、47分にはGK山下がビッグセーブでしのげば、51分には、北村のシュートを荻久保優里がゴールライン手前でクリアするなど、懸命にゴールを守る。前半と同様、ただ守るだけではなく、前からのプレスも継続し、2点目を狙うと、56分には脇阪が蹴ったFKのセカンドボールを荻久保がダイレクトでシュート。決定的な形だったが、わずかにバーを越えた。その後も東京NBの分厚い攻撃に耐えていたセレッソだったが、61分に失点。自陣右サイドを突破され、クロスを上げられると、GK山下が懸命に伸ばした手も及ばず、中で合わせられた。その後も東京NBの猛攻に遭うが、最後のシュートやクロスのコースにしっかり入り、体を投げ出してブロック。劣勢の波に飲まれず、逆転を許さなかったことは、メンタル的にも成長したところだ。それだけではなく、終盤は和田麻希とザーラ ムズダリファを投入して押し返し、試合終了間際にはザーラのクロスに和田が頭で合わせて決勝点か、というシーンを作り出せたことも今後につながる。

 

「勝利を目指していたので。残念と言えば残念ですが、アウェイで勝点1は大きいとも思う」と試合を振り返った脇阪。今シーズンここまで、最後に失点して勝点1も取り逃していたことを思えば、全員で最後まで集中力を切らさず、体を張って得た貴重な勝点1と言える。その上で、「リーグ後半戦、ホームの試合もまだ多く残っています。そこでは必ず勝ちたい」とも語ったキャプテン。今節、再三の好セーブでチームを救ったGK山下も、「次は勝点1では物足りない。絶対に勝ち切りたい」と力強く語る。中3日で迎える次節のホーム・サンフレッチェ広島レジーナ戦。セレッソは、直近2試合で得た学びも糧に、再開後、初勝利を目指す。

監督コメント

■鳥居塚 伸人監督
「前節浦和戦で0-4と大敗し、WEリーグの厳しさを味わった中、東京NBという力のある相手にどのように過ごせば勝利できるかという点を考えて一週間準備し、選手たちは一生懸命戦ってくれた結果引き分けに持ち込めたと思います。試合が経つにつれて押し込まれる時間帯もありましたが、選手たちは頑張って勝ち点1を得ることができました。ただ、こういった試合で勝ち点3を取れるチームにしていかないといけないと思っているので、これで満足せずに次節取り組んでいきたいと思います。」

Q:特に前半、前から相手DFラインを脅かすチームの持ち味が出たと思いますが、前節から今日までどのような準備を行ってきましたか?
「技術のところはすぐには変わらないけど、気持ちの部分はすぐに変えられる、そこが変わることで結果が変わると話してきました。トレーニングにおいても細かい部分にこだわって興味をもっていけるかという点を徹底しました。前節も同じようにやったつもりでしたが、相手へのプレッシャーに迫力が少なかった。今回は多少プレッシャーをかけに行けたと思います。さらなるレベルアップをさせて次節につなげたいと思います。」

Q:何かを変えたというよりも、基本の部分を徹底したということか?
「そうですね。準備のところが全てだと思うので、準備の部分でのポジショニングやうまくボールを引き出すかというところを今週はテーマとしていました。準備が一つ遅いと相手と一歩間合いが遠くなってしまいます。今日の失点もそこの部分が出てしまいました。今後も怖がらずにまず一歩アプローチをかけるというところを徹底したいと思います。」

Q:得点シーンについて、ベレーザの最終ラインの少し前の中央のスペースを上手く使っていたと思いますが、どういった狙いがありましたか?
「ウチの狙いとしてはDFと中盤の間のゾーンを使うことで相手が食いついてくれ、相手の変化を活かしDFの背後をとって得点に繋げることでしたので、それが上手く得点につながったのかなと思います。」

Q:今節の田中選手やマイ仙台戦での高和選手など、これまで得点できていなかった選手が得点できるようになったことについて
「もともと田中に関してはチャンスはありましたが決めきれなかったところが、今日得点できたことで今後も期待できると思います。運動量も多いですし相手の背後にも上手くつける選手なので、チャンスは多く来ると思いますし、今日取れたことが本人の成長に繋がっていけばと思います。高和も得点は取れますがまだまだ成長段階なので、他にも百濃や脇阪もそうですが、チャンスを得点に繋げることを課題として改善していきたいと思います。」

Q:前半と後半でシュート数のみならずパス成功数や本数、相手の守備側に入るチャンスも少なかったように思いますが、そのあたりの要因と、ハーフタイムに指示したことは?
「WEリーグが始まってから前半での失点が前節のみでした。その要因としては前からプレッシャーに行けて相手のゾーンでサッカーをやれていたところですが、後半になるとプレッシャーをかけられなくなることが勝ちに繋げられない原因だと思います。今節に関しても、選手は頑張っていますが、相手のゾーンでプレッシャーをかけることが後半少なくなっていることや、技術のところで『見る』ことや『準備』を怠ってしまうことが後半の戦い方になってしまっていると思います。」

Q:後半プレッシャーにいけなくなっている要因は疲労もあるのでしょうか?
「そうですね、相手がしっかりボールを握りだしたという点もありますが、やはり間合いのところで一歩二歩遠くなってきていることが要因の一つですし、前半は狙ったポジションにいることができますが、後半は明らかに相手が動いてから守る形になっていることが課題なのかと思います。疲れて頭が回らなくなることもあると思いますが、改善していきたいと思います。」

選手コメント

■田中智子選手
Q:WEリーグ初ゴール、おめでとうございます。ゴールシーンを振り返ってください。
「トラップをしなくてもいい、すごく優しいボールが来たので、落ち着いてGKを見てコース狙うことができました」
 
Q:冷静に判断して、ニアサイドの下に流し込みましたね。
「打つ瞬間はめっちゃ緊張しました(笑)。ファーサイド(ゴール左)に蹴ると止められそうな雰囲気を感じたので、『もうニアでいいや』と思って打ちました」
 
Q:試合の立ち上がりからセレッソらしい前線からの守備ができていましたが、それはチームとしての狙いでしたか?
「そうですね。(プレスが)漏れることも多かったんですけど、やっぱり前線からの守備は自分たちの特長なので、『しっかりと行けるように』と試合前にも話していました」
 
Q:リーグ再開後、初スタメンでした。気合は入っていましたか?
「特別な気持ちはありませんでした。いつもと変わらず、『少しでも多くチームに貢献できるように』という思いで頑張りました」
 
Q:今日の勝ち点1をどう捉えますか?
「先制したあとは、相手に攻め込まれていましたが、そういう展開でも耐え抜いて勝ち点3を取れるようにならないと、上位には食い込んでいけません。勝ち切れるように、チーム全体で取り組んでいきたいです」
 
Q:20日にはサンフレッチェ広島レジーナ戦があり、連戦になります。今後へ向けて一言お願いします。
「連戦になりますが、チーム全体で1試合1試合を大事に戦って、今度こそ勝ち切りたいと思います」
 
 
■山下莉奈選手
Q:引き分けという結果になりました。どう振り返りますか?
「点数はもう1点ぐらい取れるチャンスがありましたし、失点の部分も防ぎ切れたとも感じているので、勝ち点3を取りたかった試合でした。悔しい結果になったと思います」
 
Q:粘り強く守るシーンも多く見られて、チーム全体の守備は前節から改善されたと思います。
「縦パスを入れられた時には、そこで潰せた場面もありましたし、中央を崩されるのが嫌だったので、相手をサイドに追いやる。そういう守備をチーム全員でやろうと話していました。失点の場面は、サイドからやられてしまいましたが、チームとしてやるべき守備ができていたと思います」
 
Q:ご自身もいいセーブがたくさんありました。落ち着いて反応できていましたね。
「そうですね。いつもどおり練習でやっているプレーが出せました。落ち着いて反応したり、準備のところもできていたと思います」
 
Q:この勝ち点1を今後にどう繋げていきたいですか?
「次のサンフレッチェ広島レジーナ戦はホームゲームです。勝ち点1では物足りないので、絶対に勝ち切りたいと思います」


■中西ふう選手
Q:WEリーグ初スタメンになりましたが、試合前はどんな心境でしたか?
「今、私にできることは限られていますが、とにかく自分ができることを全部出そうという気持ちで臨みました」
 
Q:右サイドバックはこれまでに経験してきたポジションなのですか?
「元々はボランチなのですが、セレッソに入ってからサイドバックでもプレーすることになりました。最近は、練習からサイドバックでプレーしています」
 
Q:脇阪麗奈選手にパスを通して、中西選手が先制ゴールの起点になりましたね。
「やかち(矢形海優選手)が裏に抜けてくれる分、相手のライン間にスペースができるというのは予想できていました。そこにパスを差し込んだら、麗奈さんが走って受けてくれました。(パスが)うまく繋がって良かったです」
 
Q:その一方、守備面で意識したこととは?
「マッチアップする相手が(北村)菜々美さんで、スピードもあって、技術も高くて、 自由を与えたらやられてしまうと思っていました。とにかく、相手を自由にさせないように、と意識していました」
 
Q:チームとして、今日の勝点1が持つ意味とは?
「リーグが再開してまだ勝点を取れていなかったことを考えると、1ポイントでも取れたことは良かったです。ただ、その一方で勝てる試合を逃してしまった、という部分もあると思います。ですので、また日々のトレーニングからもっと高い意識を持ってやっていきたい。疲れている状態でどう準備を早くするのか。もちろんクオリティーの部分も。それらを求めながら取り組んでいきたいです」
 

■脇阪麗奈選手
Q:前節の大敗を受けて、改善を図った部分とは?
「一人一人が声を出すこと。普通のことを、当たり前のことを当たり前にやろう、と今週は取り組んできました。それが少しずつ良くなって、今日の試合になったのかなと思います」
 
Q:当たり前のことを当たり前にやる難しさは感じていますか?
「私たちは若いチーム。みんなの経験値が高いわけではないので、難しい部分は結構あると思いますが、私自身が頑張って伝えるようにはしています」
 
Q:今日は勝点1を持ち帰れました。どういうところを今後の糧にしたいですか。
「でも、自分たちは勝利を目指していたので。そこは残念と言えば残念ですが、アウェイで勝点1は大きいとも思うので、リーグ後半戦、ホームの試合もまだ多く残っていますし、そこでは必ず勝ちたいと思っています」
 
Q:後半は特にファン・サポーターが沸いていました。お客さんを沸かせる、という意味ではすごくいい試合になったと思いますが?
「そうですね。後半はウチにもチャンスはあったので、そこで決め切れたら、もっと試合自体が盛り上がったと思います。ただ、決め切れないのが今の私たちなので。(リーグ戦は)あと10試合以上あるので、必ず目標としている5位以上を目指せるように頑張っていきます」