皇后杯 JFA 第45回全日本女子サッカー選手権大会R16(5回戦)

2023.12.15

サンフレッチェ広島レジーナ

中嶋 淑乃 (51')

1

AWAY

FULL TIME

0

0-0

1-0

セレッソ大阪ヤンマーレディース

カンセキスタジアムとちぎ

ギャラリー

MATCH REVIEW

カップ戦のリベンジならず。WEリーグ参入後初の皇后杯は、“初戦”の5回戦で姿を消す

 

栃木県にあるカンセキスタジアムとちぎにてサンフレッチェ広島レジーナとの皇后杯5回戦に臨んだセレッソ大阪ヤンマーレディース。先発は直近のリーグ戦から2人変更。田中智子と藤原のどか、両選手がベンチから外れ、2トップの一角には栗本悠加、右サイドバックには荻久保優里が入った。

 

リーグカップのグループステージでも敗れた相手に対し、是が非でもリベンジを果たしたいC大阪は、2分、高い位置でボールを奪い、矢形海優が持ち込み、ファーストシュート。「最後まで勝利にこだわって、気持ちで勝ちたい」というこの試合に懸ける意気込みを、早速プレーで現した。7分にもC大阪はCKからチャンス。脇阪麗奈のキックに荻久保がヘディングで合わせたが、わずかにクロスバーを越えた。入りは良かったC大阪だが、次第にビルドアップが相手のプレスにかかり始め、自陣に押し込まれる時間が続く。ただし、この時間帯を耐えると、20分前後からは再びC大阪が試合をリード。高い位置でテンポ良くボールが回るシーンも増え始め、敵陣に進入していくと、30分には百濃実結香のプレスからチャンス。最後は脇阪のパスを受けた矢形がドリブルで運び、切り返してシュート。決定機に近い形だったが、仕留めることは出来なかった。前半、C大阪は何度か自陣での縦パスをカットされ、ヒヤリとする場面こそあったが、S広島Rに大きなチャンスは作らせることなく、0-0で終えた。

 

後半も開始直後は脇阪のパスに栗本が左サイドを抜け出してクロスを上げるなど勢い良く試合に入ったが、高い位置から圧力をかけてきたS広島Rに対し、やや受けに回ると、51分に失点。左右に揺さぶられ、最後は自陣左サイドからのクロスにファーサイドから走り込まれた中嶋淑乃に頭で決められた。前半は粘り強く対応していた守備陣だったが、この場面ではマークを外してしまった。反撃に出たいC大阪は60分、栗本がペナルティーエリア内で相手2人をかわしてシュート。DFに当たったこぼれ球に反応した高和芹夏がファウルを受け、PAのわずかに外でFKのチャンスを得る。キッカーは筒井梨香。強烈な弾道のシュートがゴールに向かったが、わずかにクロスバーを越えた。このタイミングでS広島Rは選手交代で布陣を3バックに変更。守備時は5-4-1で固める相手に対し、ここからC大阪がボールを持つ時間は増える。78分には、途中出場の和田麻希に決定機。米田博美のパスに抜け出しDFラインの背後を取ったが、シュートは枠を外れた。その後は思うようにボールをゴール前に入れることが出来ないまま時間は経過。それでも89分、百濃が左サイドの深い位置まで進入してクロスを上げると、後半アディショナルタイムには途中出場の白垣うのがドリブルで運んで自らシュート。最後まで同点を目指して攻めたC大阪だったが、ゴールを奪うことは出来ず、無念のタイムアップ。リーグカップのグループステージに続き、皇后杯でもS広島Rに敗れ、C大阪は5回戦で姿を消すこととなった。

 

試合後は、選手それぞれに落胆の色も深い様子が見られたが、「今日の負けをどう捉えるかによって、次の試合にもつながっていく。しっかり切り替えて、リーグ戦に向けて頑張りたい」と言葉を振り絞った矢形。次週に控えるWEリーグ第6節の相手はINAC神戸レオネッサ。「チャレンジャー精神を忘れず、アグレッシブな戦いをしたい」と指揮官も語る。今季序盤の大一番へ向け、再び顔を上げて、準備を重ねていきたい。


監督コメント

■鳥居塚伸人監督
「皇后杯という大会が変わった中で、勝って上に行きたい気持ちはありましたが、長いリーグ戦の疲れと強度を感じてこの大会に臨んだ結果というところで、ある意味、力の差を感じたゲームだったのかなと感じています」
 
Q:サンフレッチェ広島レジーナとはカップ戦以来の試合となったが、前半は相手のプレスをはがして前進する場面もありました。表現できた部分は増えたのかなと思ったが、後半の終盤はブロックを引かれてシュートまで行けず、追いつくことができませんでした。今日の内容に関しては?
「ハーフタイムに言ったことは、『自信と勇気をもって戦わないと、こういう結果になるよね』と。入りから慣れるまでの時間は今のウチの課題。慣れる前に、入りでジャッジできる選手になっていかないと、ゲームをコントロールすることはできないのかな、というのが率直な感想です。カップ戦を通じて、慣れてくるとそれなりに出来るけど、90分の中でロスする時間もあるので、そこは変えていかないといけないと感じました」
 
Q:「力の差」という部分をもう少し詳しく伺うと、決め切る力だったり、球際や1対1の部分でしょうか?
「そうですね。ミーティングでも話していますが、10回中9回を守っても、1回で点を取るのが、このリーグ。カップ戦でも、一つのミスから失点している。今日も危なかったのは、あの1本だけ。ただ、そこで決め切るのが広島さんの力。チャンスを生かせるか、生かせないか。その差は出たのかなと。ウチは3-0から3-3に追いつかれる試合も経験しているし、後半アディショナルタイムに失点して負けた試合もある。何が危ないのか、どこが危ないのか、感じ取ることが出来れば、あの場面も守れたはずですが、その経験が積み重なっていないことが、今日の敗因の一つだと思います」
 
Q:カップ戦、リーグ戦を通じて研究されている部分もあると思うが、そこは選手も感じながらの戦いになっている?
「そうですね。今までは、逆に思い切り出来ていた部分が、選手が成長しているからこそ、怖さも出ている部分もあると思います。そこは仕方ない面もあると思いますが、仕方ないで片づけられないので。広島さんは、見て、個人が判断してプレーしていますが、ウチは、相手が来たからパス、個人の判断というより、相手によって判断せざるを得ないプレーが多かったかなと。そこがチームの差や個人の差になってくる。そこは変えていくしかないと思います」
 
Q:次節のリーグはINAC神戸レオネッサ戦ですが、ある意味、チャレンジできる部分もある?
「レンタルバックも含め、INACから来た選手も多いので、そういう選手は絶対に負けたくないでしょうし、ウチで勝つ、という気持ちで戻ってきてくれたので、絶対に負けてはいけないチーム。時間はないですが、しっかり修正して、チャレンジャー精神を忘れず、アグレッシブな戦いをしたいと思います」
 
Q:今日の試合でも、小山選手などは、持てる力を全て出せていないように見えます。もう少しガムシャラに、リスクを冒しても、前に出てもいい気もするが?
「小山に限らず、今日は全員がチャレンジの回数は少なかったかなと。チャレンジした中でのミスであれば、技術を高めればいい。今日はハーフタイムにも言ったのですが、『チャレンジしないまま負けて終わることは絶対にしたくない』と。怖さが出てきて、今は行ってもいいのか、行ってはダメなのか。そのジャッジで、まずはリスクを冒さない方を選んでいるのが今のチーム状況だと思います。個人としても上を目指すには、もっとリスクをかけて、積極的にやって欲しいし、そのリスクに関して修正はできる。メンタル的に怖がってプレーすれば、それ以上の成長はないので、その部分は小山に限らず全員で修正していきたいと思います」

選手コメント

■矢形海優選手
Q:0-1という、この試合を振り返ると?
「1発勝負で、0-1で負けている中で、まだまだ時間はありましたが、チャンスは作ったものの決め切れなかったり、最後は全員の勝ちたいという気持ちの部分も、まだまだ足りなかったのかなと思います。残り少ない時間の中で、ゴールを奪うという貪欲さを出し切れなかったと思います」
 
Q:終盤に関しては、相手も守りを固めてきた中、迫力ある攻撃を出し切れなかった悔しさがありますか?
「そうですね。相手が真ん中を固めてきて、そこをどう崩すか、ということはあったんですけど、やっぱりゴール前が一番怖い。その中で、ボールがゴール前に入らなかったことはありますね」
 
Q:前半に関しては、時間の経過とともに相手のプレスをはがして前進する場面も増えました。負けた試合後に言うのは難しいですが、成長を示せた部分もあったと思うが?
「失点するまでは、シュートシーンまで行けたり、クロスで終われたり、ゴール前の崩しまでは行けていましたが、仕留めることができなかったことが、この結果になったと思います」
 
Q:逆に広島は、前半はうまくいっていない感覚があったかも知れないですが、後半の最初に決めて、最後は人数をかけて守り切った。C大阪からすれば、悔しい展開になりました。
「リーグカップ、皇后杯と同じ相手に2度負けたことが、一番悔しいです。借りを返せなかったことが悔しい。皇后杯は終わってしまったのですが、12月はINACと新潟とのリーグ戦があります。今日の負けをみんながどう捉えるかによって、次の試合にもつながっていくと思うので、しっかり切り替えてリーグ戦に向けて頑張りたいと思います」
 
■百濃実結香選手
Q:0-1という、この試合を振り返ると?
「特に前半は自分たちにチャンスもありましたし、全体的に自分たちのチャンスは多かった中で、決め切れなかった。相手は逆に、チャンスは少ない中でも後半の最初に決め切った。そこの力の差は出たかなと思います」
 
Q:前半は時間の経過とともに相手のプレスをはがして前進する場面も増えた。カップ戦の対戦時より内容的な成長も見せたと思うが、後半は、後ろを固めてきた相手に対して、攻めあぐねてしまった?
「そうですね。(積み上げと課題の)両方を感じました。先に決められてからは、落ち着けなかったというか、ミスも増えてしまった。失点後も自分たちのペースで落ち着いてやれば、また違ったのかなと。相手が引いてきて、攻めにくくなって、運ぶのかパスなのか判断での迷いもあった。そこでミスをして失うこともあった。相手が引いてきたとしても、相手のペースに飲み込まれるのではなく、自分たちのペースに引き込めたら良かった。その力も必要かなと感じました」
 
Q:個としては、積極的に仕掛けてチャンスにつなげる場面も作ったが?
「直近のリーグ戦は、自分の中でも悔しい気持ちがありました。チャンスも作れず、守備での時間が多くて、攻撃で自分の良さが出せなかった。今日は比較的、落ち着いてプレーできて、仕掛けたり、クロスを上げることは、最近のリーグ戦の中でも一番出来たと思います。スピードの部分もいつもより出せたので、あとはそこからのクロスの質や、自分でシュートを打つことにもこだわっていきたいです」
 
■筒井梨香選手
Q:0-1という、この試合を振り返ると?
「特にやられたわけではないですが、自分たちのミスが多過ぎました。そこをいかになくしていくか。丁寧にボールをつないで、ゴールまでいくことを突き詰めていけば、絶対に勝てる。中央から崩すことができずにサイドに逃げて、(プレスに)ハマって(ボールを)失うことも多かった。日頃の練習からもっと合わせていくことが必要だと思います」
 
Q:前半は相手の陣地へ入って行くシーンも作ったが、細かいミスはもっと減らしていかないといけない?
「もっとボランチを使って、ボランチがサイドを変えたり、中央を崩して(3人目が)関わったり。全体的にコンパクトに守備をして、攻撃は広く。サイドが開くから間が空くし、間に行くからサイドも空く。もっと全体が全体を見れてやれれば、もう少し落ち着いてリラックスしてプレーできる。前でボールを持ったらプレッシャーも速いから焦るとは思うけど、見えていたら、止める技術はある。出来るはずやのに、っていう(もどかしさがある)。メンタル面が、まだまだ自分たちは弱いのかなと思います」
 
Q:広島も決して前半は良くなかったと思われる中で、後半の最初に決めて、守り切られた。悔しい展開でしたね。
「どうにかできた試合ではあったと思います。ただ、DFラインのリーダーは自分なので、そこで指示を出来なかったことは自分の責任。その瞬間、失点するということは、隙があったということ。もっと周りが見れていれば、もっと準備を先にしていたら、声を掛けてあげていたら、失点は防げたかも知れません」