2023-24 WEリーグ第1節

2023.11.12

セレッソ大阪ヤンマーレディース

矢形 海優 (60')

1

HOME

FULL TIME

0

0-0

1-0

ジェフユナイテッド市原・千葉レディース

ヨドコウ桜スタジアム

2,516

ヤンマー #Football is our engineサポーティングマッチ

HIGHLIGHTSハイライト

ギャラリー

MATCH REVIEW

WEリーグ初陣は矢形海優が決勝点。ヨドコウ桜スタジアムで歴史的1勝を掴む
 
いよいよ開幕した2023-24 WEリーグ。今シーズンからWE参入を果たしたセレッソ大阪ヤンマーレディースにとって記念すべき初陣の相手はジェフユナイテッド市原・千葉レディース。歴史に名を刻んだスタメンは、GK山下莉奈、DFラインは左から小山史乃観、浅山茉緩、筒井梨香、藤原のどか、ダブルボランチは脇阪麗奈と宮本光梨、左サイドハーフに百濃実結香、右サイドハーフに高和芹夏、2トップに矢形海優と田中智子が並んだ。
 
試合は序盤から互いにプレスをかけ合い、球際の攻防が激しい展開に。5分、C大阪は自陣ゴール前でパスをカットされてヒヤリとしたが、7分には田中智子が相手GKへのパックバスに詰めてボールを奪い、決定機。ただし、ここはシュートがクロスバーを越え、先制はならず。その後は千葉Lのプレスの前に、C大阪は思うようにボールを運べない。カップ戦での対戦時は左サイドバックの小山が高い位置を取って押し込むことに成功したが、「カップ戦で対戦したことによって、ウチの攻略はしてくると思う」と試合前に鳥居塚伸人監督も話していたように、千葉Lの圧力にやや苦しむ時間も続く。それでもここをしのいだC大阪は32分に再び決定機。高い位置で脇阪がボールを奪い、ペナルティーエリアの角を取った田中のクロスに矢形が飛び込み、ヘディングで合わせたが、わずかに枠を外れた。ただ、その後も主導権を握り切るには至らず前半はシュート2本に留まり、0-0で終えた。
 
「準備のところが遅くて、つながりが非常に少ない。ボールウォッチャーになっている時間を準備の時間にあてよう」という指揮官の指示を受けて迎えた後半は、近い距離でのパス回しからリズムも作りかけたC大阪だが、後半最初の決定機は千葉L。56分、1本のフィードから大澤春花に裏を取られたが、GK山下が絶妙な飛び出しでボールに触り、シュートは許さない。すると58分、C大阪に決定機。筒井のフィードから矢形、田中、脇阪とテンポよくつなぎ、最後は矢形のクロスに田中が合わせたが、シュートは枠を捉えることができなかった。絶好のチャンスを逃したC大阪だったが、2分後の60分、待望の先制に成功する。センターサークル付近で百濃がボールを奪うと、自ら運んでクロス。フリーで受けた矢形が落ち着いてシュートを放ち、見事ネットを揺らした。カップ戦でもホーム開幕戦でゴールを奪った背番号11。記念すべきリーグ戦の第1号ゴールも刻んでみせた。「リーグ戦での1ゴール目を決めたい思いはある。そこで決めたら、これからのリーグ戦も乗っていける」と試合前に話していた桜なでしこのエース、有言実行の一撃だった。
 
直後の相手のCKは山下がしっかりキャッチ。一度、掴んだ流れは離さず試合を進めると、ここからチーム全体に躍動感が増していく。67分、脇阪が力強く運んで右へ展開。直前に交代で入っていた白垣うのが思い切ったミドルシュートを放つと、69分にも脇阪のパスを受けた小山が縦に突破。果敢に2点目を目指す。前からの守備の強度も落とさないC大阪は、82分、田中のプレスから途中出場の栗本悠加がゴールを狙う。開幕の3日前に17歳の誕生日を迎えた栗本は、85分にも縦に仕掛ける積極性を発揮。試合はこのままC大阪が1点リードで後半アディショナルタイムへ突入する。試合終了間際、千葉Lの猛攻を受けると、相手のループシュートや際どいクロスも浴びたがGK山下がしっかりボールをこぼさずキャッチ。最後はサイドからのクロスを筒井がヘディングで跳ね返したところで試合終了。見事、C大阪がWEリーグ初陣を勝利で飾った。
 
決勝点の矢形、攻守に精力的に動いた田中の2トップを筆頭に、多くの選手の活躍が見られた開幕戦。「カップ戦では得点に関わるプレーを出せなかったので、リーグ戦では得点やアシストにこだわりたい」と話していた百濃が決勝アシスト。脇阪が幅広く動いて攻守に試合を掌握すれば、GK山下は1試合を通して際の強さを発揮した。試合後、涙が止まらなかったキャプテンの脇阪は、「初めてうれし泣きしました。見えないプレッシャーがかかっていて、(涙が)出ました(苦笑)」と率直な思いを吐露した。「若いチームですから、開幕戦で硬くなることは見えていました。それでも、サポーターの皆さんの後押しもあって何とか勝利することができて良かった」と安堵の表情を浮かべた鳥居塚監督。歴史的1勝を見届けたヨドコウ桜スタジアムのサポーターとともに、セレッソ大阪ヤンマーレディースが開幕戦から満開の桜を咲かせてみせた。

監督コメント

■鳥居塚伸人監督
 
「WEリーグカップでも対戦しましたが、カップ戦の時よりもジェフさんがプレッシャーをかけてきて、ビルドアップも丁寧にされていて、後手を踏む場面が数多くありました。そういった中でも選手が一生懸命にやってくれて、またサポーターの皆さんの後押しもあって何とか勝利することができ、良かったです。課題も多くありましたので、次節に向けてまた整理してやっていきたいと思います」
 
Q:前半はうまくいっていない感じがありましたが、後半は修正できていたと思います。ハーフタイムにどういう指示を出されたのでしょうか?
「若いチームですから、開幕戦で硬くなることは見えていましたし、それが思ったとおりに出てしまいました。ハーフタイムには『やってきたことしかできないし、それをしっかり100パーセント出そう』と。準備のところが遅くて、つながりが非常に少なかった。それによって相手のプレッシャーにハメられてしまっていました。ボールウォッチャーになっている時間を準備の時間にあてようと伝えて、後半に臨ませました」
 
Q:決勝ゴールを決めた矢形選手について。
やっぱりWEリーグを経験しているだけあって、相手の嫌なところにもしっかり入ってくれていました。チャンスも多くあった中で、ああいう場面で決めきることは、彼女の経験値が生きているのかなと。そういうところをチームとしても生かしながら、やはり点を取れないと勝てませんので、継続して、そこの課題に取り組んでいきたいと思います
 
Q:これからWEリーグを戦っていく上で、得られた手応えとは?
「カップ戦は相手チームにとって(C大阪の)データもない中で、ウチは勢いだけで戦ったという形にはなると思いますが、リーグにおいてはこれから分析されるでしょうし、そういう中でどういうふうに打開していくか。経験値が出てくる部分ですが、ウチの場合、その経験値は時間で埋めていくしかないと思っています。それをどう打開していくかは、しっかりとトレーニングの中で改善しながらリーグ戦でまた勝利が重ねられるようにしていきたいと思います」

選手コメント

■矢形海優選手
 
Q:得点シーンを振り返ってください。
「(百濃)実結香がドリブルをしてくれたことによって、相手DFが実結香のほうに引き寄せられました。そこで自分がフリーになることができ、同時に実結香からいいボールが来ました。最初はダイレクトで打とうかなと思ったのですが、周りを見た時にフリーだと思ったので、慌てずにコントロールして、あとはもう本当に(シュートを)流すだけでした」
 
Q:ゴールパフォーマンスについては?
「もう本当に何も考えていなかったんですけど(苦笑)、たくさんのサポーターの皆さんの前で得点できて、自分の気持ちも上がっていたというのもあって、ああいうガッツポーズになりました(笑)」
 
Q:後半はボールを奪える場面も増えましたが、前半と比べてチーム全体でどう変化がありましたか?
「ハーフタイムにトリさん(鳥居塚監督)から『焦らずに、自分たちでボールを握ろう』と指示されたこともあり、前半よりも全体的に落ち着いてプレーすることができていたと思います。マイボールの時間が増えたことは良かったです」
 
Q:昨シーズンまではウイング的なポジションでしたが、現在は2トップの一角として得点を強く求められていると思います。その部分の手応えはいかがですか?
「セレッソに来てからは、自分が一番ゴールの近くでプレーしたいという思いがあった中で、トリさんが前で使ってくれています。みんながつないでくれたボールですし、自分としては常にゴールを狙っています。そういった中で開幕戦で決めることができたのは、自分にとっても大きいです。今シーズンは二桁得点を目標にしているので、この勢いに乗ってどんどん貪欲に狙っていきたいと思います」
 
Q:自分のゴールでチームを勝たせたいという思いは強いですか?
「そうですね。本当に今日みたいに1-0で自分のゴールでチームを勝たせる。それが自分の仕事だと思っています。ただ、ゴールだけではなく、前線で守備から(試合に)入ることは意識していますし、その部分でもチームのために最後まで走りきる。そこもしっかり出していきたいと思っています」
 
 
■脇阪麗奈選手
 
Q:試合後には涙が見られました。
「はい。何か、初めてうれし泣きしました。見えないプレッシャーのようなものが結構かかっていて、(涙が)出ましたね(苦笑)」
 
Q:試合を振り返ると、前半はあまり良くなかったと思います。
「そうですね。相手が結構前から来ていたので、そこの部分に慣れるまで少しミスが多かったです。ただ、慣れてからは自分たちがボールを支配し、特に後半は自分たちのペースだったと思います。1点取れて良かったです」
 
Q:今日の勝利が持つ意味とは?
「自信にもなりますし、とにかくWEリーグ初年度でまず1勝できたということは、本当に大切な1勝になったと思います」
 
Q:円陣の時、チームメイトにはどんな声を掛けたんですか?
「まず『楽しんで自信を持ってやろう』と。あとは、『自分たちだから大丈夫!』っていうような声掛けをしましたね」
 
Q:今日は雨も降っていてピッチが少し滑りやすい状況でした。それも関係して試合開始から前線からのプレッシングを強めていたのでしょうか?
「私たちのプレッシングは本当に相手からしたらすごく嫌だと思うので、このピッチコンディションですし、絶対に相手はミスをすると思って、全員でエンジンかけていきました」
 
Q:特に後半は効果的な攻撃参加があり、複数人が連係してのコンビネーションも見られました。
「(ゴールを)取れると思ったので(笑)。チーム全体で3人目の動き出しなどはもっと出していかないといけないと思いますが、言葉で伝えるよりも、私自身が率先してプレーで見せていきたいと思っています」
 
Q:スタンドの雰囲気はどう感じられましたか?
「もうアップの時から応援がすごくて、『やばい、みんながまた固まってしまう』と思っていたんですが(笑)、9月のサンフレッチェ広島レジーナ戦で少し慣れていたのか、そこまで固くなり過ぎず、応援をパワーに変えられていたと思います」
 
 
■筒井梨香選手
 
Q:まず今の気持ちを聞かせてください。
「安心した、って感じです(笑)。良かったな、と。無失点で終えられたことが1番良かったです。あとは、前半は良くなかったけど、後半に修正できたことも良かったです」
 
Q:前半、あまり良くなかったのは緊張もあったのでしょうか?
「そうですね。緊張と、ピッチが思ったよりもスリッピーで慣れるまでに時間がかかってしまったという印象です」
 
Q:後半に臨むにあたり、チームで共有したこととは?
「まず前半は自分自身が良くなかったです。だから、自分が『とりあえず落ち着こう』と。チーム全体としてはもう少し声を出して、空いているスペースをちゃんと見て判断しよう、と。基本的な『止める』、『蹴る』の徹底も改めて全員で共有しました」
 
Q:ラインコントロールの部分など、意識したことはありますか?
「無失点に抑えるために、自分がやらなければいけないことを徹底してやる。それを意識していた中で、かつ一対一では絶対に負けない。前半は少しやられてしまった部分があったので、後半は特に気を引き締めて、集中できていたと思います」
 
 
■百濃実結香選手
 
Q:得点シーンは、ご自身のボール奪取からドリブルで持ち上がり、素晴らしいクロス気味のパスからアシストしました。
「前半は自分の中であまりうまくいかず、試合の入りとしては悪かったのですが、後半はチームメイトとの距離も近くなり、自分のプレーを出せるようになりました。私の特長は攻守にわたってハードワークすること。今日の得点シーンは自分の良さである守備でのボール奪取から、ドリブルとパス、どちらを選択するか。自分で最後までいくか迷ったのですが、矢形(海優)選手が見えたのでパスを出しました。決めてくださったので良かったです」
 
Q:WEリーグカップでは右サイドハーフを務めることが多かったですが、今日は左サイドハーフでの先発でした。
「練習試合でも左サイドハーフをやらせてもらうことが多かったです。自分の特徴的に左だったら、ドリブルをした際に相手の懐に入りやすい、体を入れやすいので、おそらくそういうことを考慮していただいて、左になったのかなと思います。あと、(小山)史乃観とのかかわりという部分でも、自分が外にポジションを取ったり、内側に取ったりする中で、彼女はすごく賢くて、自分に合わせてくれるのでやりやすいです。それでいろいろな攻撃パターンを出せる、という狙いから今日は左サイドハーフだったのかなと思います」
 
Q:開幕戦という大事なゲームで、チーム全体の気合いが入っていたと思います。球際などかなり激しくやり合っていましたが、メンタル面でも相手を上回れましたか?
「戦う舞台がWEリーグになり、球際の部分は練習の時からずっと強調されていましたし、WEリーグ経験者の選手からも『そこは大事』と言われていたので、みんなが球際を意識して入りました。(脇阪)麗奈さんからはハーフタイムに『球際いけているから、もっといこう!』という声掛けもしてくださって、後半、より一層、スイッチが入ったのかなと思います」
 
Q:ホームでの開幕戦で勝利を挙げられた意味や意義をどう捉えていますか?
「WEリーグカップのホーム開幕戦の時は勝つことができず、たくさんの方が来てくださっていたぶん、すごく申し訳ない気持ちでした。今回、勝つことができて、やっぱりホームでたくさんの方が見に来てくれる中で勝つことは、次の試合に見に来てくださる方が増えることにもつながると思うので、とても良かったと思います。試合中の声援はやっぱり力になりますし、本当にいい雰囲気の中、勝って終わることができてうれしいです。もちろん、WEリーグでいいスタートを切るという意味でも、今日の勝利はすごく大きいと思います」
 
Q:今日の試合で感じた課題や、今後に向けて高めていきたい部分とは?
「パスかドリブルか。どちらかを判断する際に、判断が悪くて自分のところでボールを奪われるシーンが多かったです。そういった判断の質。あと、パスのクオリティーなどをもっと上げていきたいです。パスもできるし、ドリブルもできる。そういう怖い選手になれるように頑張っていきたいと思います」
 
 
■小山史乃観選手
 
Q:前半の課題を後半に修正できていたと思いますが、どう改善したのでしょうか?
「(筒井)梨香さんとも『あんまりうまくいっていないね』と話していました。自分がボールを持った時もパスコースがなくて……。それで、もっとつながりをもって、お互いが目を合わせて動こうというのを意識しました。ただ、後半うまくいったかと言われると、自分としてはそこまでいい感触はありません。WEリーグを戦う中でシーズンを通して、こういった課題と向き合ってやっていかなければいけないと感じました」
 
Q:相手のアタッカーには強力な選手がいましたが、そこをどう抑えるのか、意識していたことはありますか?
「自分たちが前線からプレッシャーをかけにいくので、まず相手のアタッカーにボールを入れさせないというのを全体で意識していました。前線からプレスにいくぶん、後ろはラインを上げないといけないので、そこのラインコントロールは練習から準備していました」
 
Q:改めて、前半あまり良くなった要因としては、開幕戦ならではの緊張があったのでしょうか?
「人によると思いますが、みんな多少なりとも感じている部分はあったのかなと。そこはやっぱり若さが出てしまいます。あと、ゲームコントロールの部分は『もっと経験を積んでいかないといけない』と監督からもお話がありました」